アニマル泉

たそがれの恋/グレイト・フラマリオンのアニマル泉のレビュー・感想・評価

4.2
「百中百中」の曲芸撃ちフラマリオン(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)の悲運を描くアンソニー・マンのバックステージ物。冒頭、メキシコシティの劇場の歌とパフォーマンスにゆったりと誘われる、突然響く銃声と悲鳴、あっという間に殺人が行われる。そして瀕死のシュトロハイムが手摺り階段を登り、天井裏のキャットウォークに潜むが、やがて墜落する。アンソニー・マンの重要な「高さ」の主題がいきなり現れる。マンの作品では登場人物は高い所へ、上へ上へと逃げて、墜落死するからだ。シュトロハイムが圧巻だ。百発百中の芸が凄まじい。次々と容赦なく撃ちまくる。メアリー・ベス・ヒューズとダン・デュリエを相手に小物や装身具や煙草などを撃ち落としていく。シュトロハイムは冷徹で人を信じない。相手に目線を合わせない。前妻に裏切られて極度の女性不信に陥っている。それがヒューズに狂わされていく。このシュトロハイムの愚かさが可笑しい。プレゼントを買ったり、花を飾ったり、遂には一人で踊りだす。ヒューズの悪女ぶりが徹底して素晴らしい。次々と男たちを乗り換えていくファム・ファタールだ。こちも「百発百中の女」である。
本作はマンの「鏡」の主題も頻出する。構成は死に際のシュトロハイムが回想する形になっている。
シュトロハイムがヒューズを遂に発見する場面が素晴らしい。壇上のヒューズにトラックイン、ジッと見つめるシュトロハイム、そして静かにステージに寄っていくシュトロハイムの背後からロングショットでカメラもステージに寄っていく、この移動ショットがスリリングで官能的なのだ。
そして楽屋でいきなり二発撃ち込む、この再会の演出も素晴らしい。
シュトロハイムの部屋のストライプの影、ラストのシルエットなど光と影も美しい。
リパブリック配給。
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