「プレイタイム」
冒頭、オーケストラが流れる音楽と共に青空の描写。
ガラス張りの超高層ビル、2人の夫婦と赤子が待合椅子に座ってる。カメラは様々な人を捉え、アングルが不意に変わる。空港、荷物検査、パリ観光、団体客、そしてユロ氏。今、女性と夜会でダンスをする…
本作はJ.タチが67年に監督、主演、脚本を務めた傑作中の傑作でBDで鑑賞したがとんでもない映像美と計算式に興奮する…
映像編集と音響編集が神がかっている。
さて、物語は米国人観光客が空港に到着しパリ観光へとみんな足を運ぶ。仕事の面接を受けようとするユロ氏は近代的なビルディングの中ですれ違いを繰り返し、
中々担当者と会うことができない。それから街を彷徨う様になった彼は閉店したレストランで米国人観光客の女性と出会う…
とこんな感じで。
いや〜出だしの音楽は最高にかっこいい。
それにこだわり抜いたセットが大迫力ある、センスの塊だ。
セットの内側から見た外、外から見たセットの内側…環境音が止まり静寂になったり、床と靴が擦れる音、ユロ氏の影、半分空撮気味にに捉える空間、エレベーターのライトアップ、
花屋の老婆を一生懸命カメラで撮影しようとする女性のシークエンスが面白くて好き。
ラジカセで音楽を流す若者を映したり、東洋人のスーツ姿の男性を映したり、 ガラス張りの扉に反射するエッフェル塔を眺める女性や、
ユロ氏と格好が似たチビな男性の大胆不敵なカタログ持ち去りや高度経済成長期の日本企業の人達の団体や整備されたパリの街並みのスタイリッシュさ、
夜のパリの街並みも日中とは一風変わって洒落た雰囲気がある。
それに前作同様に終盤にはシンボリックと化したラウンドアバウトの愉快な描写がきちんとあって微笑ましい。
このBDこそ70ミリフィルムの高い質感を再現した傑作だ。
最後に余談だが本作はもともと2時間33分あってその後、
編集して2時間15分になり1979年に公開された時は1時間59分になっていたが今回このボックスが発売するにあたってアーカイブに残っていたフィルムを加えて2時間4分の修復版が作成されたらしい。
監督自身が言うように映画を撮る他に別のこともしてみたい…例えば大きな建物を作るとか…と発言しているが、本作はその言葉を実現している。
まだ未見の方は是非観てほしい1本だ。
このような映画が"野心作"だ…と思わされること間違いない。
あ〜幸せな気分になった。