コーカサス

地獄の逃避行のコーカサスのレビュー・感想・評価

地獄の逃避行(1973年製作の映画)
3.6
テレンス・マリックの監督デビュー作。

15歳の少女ホリー (スペイセク)との交際を禁じられた25歳のキット (シーン)は、彼女の父親を殺害し、ふたりは逃避の旅に出る。
1958年にネブラスカ州で実際に起こった「スタークウェザー=フューゲート事件」を基に、ジェームズ・ディーンに憧れる若者と純真無垢な少女の逃避行を描いたロード・ムービーだ。
調べによると、当時19歳のチャールズ・スタークウェザーは14歳のキャリル・フュゲート(本作においてのキットとホリーである)と共に、僅か2か月の逃避行の間に11人を殺害したという。
またその撮影手法は、後の『セブン』やタランティーノ監督作品などに、物語は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』や『トゥルー・ロマンス』など、数多くの作品に影響を与えた。

美しい風景とは相反し、破滅へと向かう若い男女は、さながらボニー&クライドのようだ。
しかし、個人的には名作『俺たちに明日はない』を超えることはなく、ジミーに憧れる主人公を演じたシーンの芝居が皮肉にもマイナス要素に思えてならなかった。

逃亡から12日目、ふたりは警察に包囲されるとキャリルは車から飛び出し、スタークウェザーに罪の全てを擦り付ける。
わずか14歳とはいえ、自分の父親を殺した男を好きになり、一緒に旅をすること自体が狂気であり、仮に人を殺めずとも決して無罪とは云い難く、その変わり身の早さには恐怖すら感じた。
彼女は終身刑を宣告されるが、76年に仮釈放され、今も無罪を訴え続けている。

22 2022