みおこし

終わりで始まりの4日間のみおこしのレビュー・感想・評価

終わりで始まりの4日間(2004年製作の映画)
3.7
LAに暮らす俳優のアンドリューは、とある役が評価されて以降は鳴かず飛ばずで、精神安定剤を服用しながら暮らしていた。ある日、故郷ニュージャージーに住む父から連絡があり母の急死を知らされる。家族間での複雑な過去を持つ彼は気乗りしなかったが、母の葬儀に立ち会うために久々に帰郷することになるが…。

個性派俳優のザック・ブラフが主演と監督を務めた作品。共演は若き日のナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、イアン・ホルムと演技力に定評のあるメンバーが勢ぞろい。とある青年が里帰りをきっかけに自分の過去と未来を見つめなおす秀逸な人間ドラマでした。
飛行機が乱気流の中を進んで他の乗客が叫び倒している中、一人だけ無表情のままアンドリューが座っているオープニングから、彼の人物像がにじみ出ています。物事をネガティブに捉えがちで、何をしていても無感動、他人を簡単には信用しないというかなり難しい性格。彼がこうなってしまったきっかけは、過去の苦い体験にあるのですが、これが相当シビア。あれだけの経験をしたら、他人を信用する心も自己肯定感も全部亡くしちゃうだろうなと…。
そんな彼の前に現れた風変わりな女性サム。天真爛漫で心優しいけれど、どこか抜けているサムをナタリー・ポートマンが魅力たっぷりに演じています。初めてアンドリューが彼女の部屋を訪れるシーン、インテリアからも彼女のヘンテコっぷりがさく裂ししてて笑っちゃうと同時に、あのシーンから一気に彼女に惹きつけられました。他人の苦しみや痛みを察知して泣くことができる、ってその人が本当に心優しい証拠ですよね。特に感情が”死んでいる”アンドリューにとっては、生き生きと感情を表に出すサムは自分と正反対であるとともに自分に欠けた1ピースを補ってくれる存在になり得るわけで。すごく素敵な関係だなと思って、2人のやり取りに心癒されました。

コロナを機に世界中がどんどん生きづらい世の中になっていきますが、鬱屈した気持ちを打破する唯一の方法は、今の自分に無いものを見つけてそれを新たに自分に取り入れていくことなのかな、なんて思いました。
日本未公開だったことが信じられないくらい、じーんと心にしみわたる素敵な映画でした。
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