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怪談累が渕(かさねがふち)のmitakosamaのレビュー・感想・評価

3.8
有名な三遊亭圓朝の怪談噺・累ヶ淵の何度目かの映画化。
元々「累ヶ淵」の物語は江戸時代からあるし、鶴屋南北も書いてるから、古典怪談の名作の1本だね。
とはいえ原作がかなり長いので、ピックアップした内容になってる。
基本となる累ヶ淵の「親の因果が子に報う」ことは物語の真としてある。

先ずあん摩の宗悦のエピソードから。宗悦に中村鴈治郎!玉緒パピィ怖過ぎです。
座頭で金貸し。江戸時代に幕府公認の高利貸しだった故、実際に恨みも買ってたのかねぇ。
蚊喰鳥でも座頭の金貸しだし、四谷怪談の卓越や有馬猫の龍造寺など、盲目が怖さのアイコンなのが興味深いね。

宗悦の話はプロローグ的に進むので展開が早い。テンポ良く刃傷沙汰になる。旗本の深見新左衛門に催促に行ったら逆ギレされて斬られちゃう。まぁお約束ですな。
斬られても執念深く食い下がる宗悦。『ワシが死んだら娘たちがぁ』って言うけど、明らかに『ワシの金を返せぇ』の方が本音なんだ。金のガメつさが滲み出てて同情の余地も無い。
その業の深い座頭の成れの果て、ただの霊じゃ無いタチの悪い悪霊。それを鴈治郎のあのキャラで発揮される。
新左衛門と女房のお熊が呪い殺されて成仏すりゃ良いのに、そこから話が始まる。

宗悦の娘は、姉の豊志賀が長唄の師匠になり、妹のお園は芸妓になる。
そこに新左衛門の息子新五郎が縁あって豊志賀と恋仲になるっていう因果。

豊志賀が中田康子。蚊食鳥に次ぎあん摩に翻弄される長唄の師匠で、色っぽい熟女。
師匠として凛とした豊志賀が、新五郎に惹かれてだんだん甘えキャラになるのは、本当に堪らん。色っぽ過ぎ。

でも死んだ父ちゃんが許さないんだな。ワシを殺した息子と付き合うのは許さん。 なんと理不尽な。
宗悦が斬られた箇所と同じ様に顔に傷がつき病に倒れる豊志賀。嫉妬深くもなり精神的にも病的になる。
鴈治郎だけじゃなく、中田康子の怪演も良いんだよ。
父の悪意が子にまで遺伝的に受け継がれているかのような禍々しい感じ。
単純なお化けの怖さだけじゃ無い。悪意のビジュアル化。コレが累ヶ淵の怖さの本質だよなぁ。

累ヶ淵の落語自体が数多くの名人に語られ、映画かもされ、コレだけで語れるネタが豊富すぎる。
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