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ザ・シャウト/さまよえる幻響のbrianのレビュー・感想・評価

4.1
超自然的な能力を持つ男に人生を狂わせていく夫婦の運命を描いたサスペンスタッチのスリラー映画。

冒頭から病院の壁には普通では考えられない赤色の太いラインが印象的に映し出される。最後の場面で再びそれが映し出されるのだ。

舞台はイギリス。クリケットに興じるシーンが多く使われて、白い上下のユニフォームにチルデンセーターを着ている青年もいる。自然芝が色鮮やかで美しい。
しかし、この国特有の曇天の空はいつ雨が降ってもおかしくない。

衝撃的なシーンの前触れが音や映像によって独特の緊張感をもたらす。なんとも言えない奇妙な作品であった。

アラン・ベイツは逞しい体で黒っぽい服装と無精髭には白いものが混じり眼光が鋭い。近寄り難い雰囲気のある男を怪演。

ジョン・ハートはスマートな体でパイプオルガンを奏でる気の優しい音楽家を好演。犠牲を払う弱さに心を傾ける。

スザンナ・ヨークは夫がありながら欲望の赴くまま謎の男に寄り添っていく姿を体当たりな演技で見せる。

監督は「バリエラ」(1966)「出発」(1967)「早春」(1970)などを手がけた"鬼才"イエジー・スコリモフスキ。

数年前、京都で開催されたポーランド映画祭のトークショーでお見かけした。
風貌は強面だが、映画に対してユーモアを交えながら真摯に語る姿が印象的。また来日してほしいが、ご高齢で近隣諸国の社会情勢が不安定な時期だから、今はゆっくり余生を過ごしてもらいたい。


「ザ・シャウト/さまよえる幻響」(1978)予告編
https://youtu.be/hGuByqCtqCw
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