よしまる

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のよしまるのレビュー・感想・評価

2.8
 前回レビューした「木と市長と文化会館ーで出てきた条件法、もしナニがナニだったらアレだったのに、みたいな描写があったよね!と思い出して久々の再鑑賞。

 ケイトブランシェットがある出来事に出くわす場面を、その条件法的に分析を絡ませながら丁寧に描いている。確かに印象に残る面白いシーンだけれど、全体を俯瞰して見ればなぜそこだけ運命のいたずら感をやたら強調して見せているのか、他にもそのようなキーポイントはいくつもあるのに??と思ってしまった。まあ、やりたかったんだろうなということで。

 ありえない設定だからこその驚くような展開があったり、胸を焦がすような切なさがあったりすれば良かったのに、物語は意外に淡々と進み、たいした起伏もなく終わる。病室で娘であるキャサリンが、母親にベンジャミンという男の手記を2時間40分ほどに渡って読み続ける、それだけというのも考えてみたらすごいし珍しい。もうすぐ死にかけなままよくあんなに長時間聞いていられるなと、数奇な人生よりそっちのほうがリアリティが無かった💦
 娘のキャサリンも、知らんおっさんの色恋沙汰とか、挙句オヤジのスケベ話とか全然聞きたくもないと思うんだが。

 あと、ハリケーンがやって来る、てのは一体なんだったの?何かの比喩とかなのかなぁ。

 結局のところ、ブラピもケイトもとても良かったんだけれど、この奇妙な環境と関係の中で、2人ともどこか冷めていて、共感して喜んだり悲しんだりとかさせてくれもしなければ、応援してあげたくなるわけでもないという、長尺で壮大に人生リフレインしている割に薄っぺらいお話に思えてしまった。構成として、ブラピもケイトもどっかへ消えては何度も戻ってくるのがまったく根拠も説明もなく予定調和に過ぎるのが原因じゃないだろか。

 画の美しさや、シーンごとのシチュエーションの面白さはフィンチャーならではの魅力、でもそれほど心を動かされなかったのはおそらく脚本のエリックロスって人がボクにはことごとく合わないというのがようやくわかってきた。
 
 ところで前から気になってたんだけれど、邦題はベンジャミン「バトン」ではなくて「ボタン」で良くない?