ラスコーリニコフ

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のラスコーリニコフのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品の主題は、若さや見た目への賞賛に対するアンチテーゼと、老いゆく先進国への警告であろう。主人公は、戦争で息子を亡くした時計職人が時を遡りたいと願った影響からか、加齢とともに肉体が若返り、精神は老いていくという運命を背負う。生まれたときに老人ホームで暮らすことで、人よりも早い精神的成長を遂げるわけで、ここには老人が果たすべき一つの役割があるかもしれない。精神は未熟だが、老人の風貌をしているため、社会は主人公を老人とみなし、結局未熟な精神が見抜かれることはない。人は見た目でしか他人を判断できないという皮肉がここに表現されている。若返っていくにつれて、恋人とちょうどよい完璧なタイミングを迎え、子供も産まれるが、しかし幸福なタイミングは長く続かない。主人公は自ら去ることでヒロインに迷惑をかけまいとするが、結局政府に保護されることでヒロインの元に戻されることになり、迷惑をかけることになる。この恋愛劇はとてもチグハグしていて、もどかしい印象を受けるのだが、ただ主人公もヒロインも幸福な死を迎えることになる。よく生きることは、よく老いるということと同じだ。教訓に満ちた映画だと評価できるだろう。