ゆーさく

ベンジャミン・バトン 数奇な人生のゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

病気の時とか体調悪い時って、嫌なこと思い出したり、弱気になったり、考え方まで卑屈になりがち。


そんな風に心と体は繋がってるってよく言うけど、それと同じで、体が歳を取っていると考え方も歳を取ったような考え方になる。

主人公の2人は、出会ったときからそこがズレてしまってる。


愛し合ってる同士ではあるけど、いつも一方が老いていて、一方が若々しい。


一方が一晩中遊び歩きたいほど体力が有り余ってる時に、もう一方はそんな事する年じゃないし、体力もない。


二人の体と心の年齢がちょうど重なるほんの一時だけ、二人は蜜月を過ごす事が出来るけど、再び年齢の差が開き心がすれ違っていく前に、二人はそれを察して別れを選ぶ。


この映画は、愛する人と一緒に年を取っていける幸せを描くために、敢えてそれが出来ない人を描いているのかな、と思った。



1回目観たとき、ストーリーは面白かったけど、何だか掴み所が無いな、という印象だった。

何を意味するシーンなのか分からない場面がちょくちょくあって「今のシーンはなんなんだろう?」と思ったり。


主人公2人の話だけしてれば良いのに、雷に何度も打たれた男とか、ピグミー族の友達とか、タトゥーアーティストの船長とか、
主役のベンジャミンさんだけで変人要素お腹いっぱいなのに、
やたら個性強めな賑やかしがそこここに出てきて、上映時間3時間弱って。。

長えよ削れ削れ、と最初は思ってたんだけど、何度か見直すうちにちょっと感想が変わってきた。


これ、きっと、何か1つのメッセージを「これ!」って押し出すような映画じゃなくて、もっとまんべんない、人の一生にまつわる出来事を網羅してる感じの映画なんだろうな。


ベンジャミンは年を取るにつれ見た目が若返るわけだけど、
例えば、若い時に果たせなかった夢(水泳でドーバー海峡横断)を老境を迎えて初めて果たすエリザベスのエピソードのように、年を取ってから若々しく輝く人生もあるわけで。
人生の筋道は人それぞれで、そこにどんな出来事が起こっても変じゃない。

逆に言えば、人の人生は、皆それぞれに何かしら奇妙なのかも知れない。
ベンジャミンの場合に限らず。

ラストシーン、カーテンコール的な人物紹介のシーンを観てそんな風に思い至った。


どんな奇妙な人生を送った人も、終わりの時は来る。

時間には押し流されていくしかない。
巻き戻すことも留まることも出来ない。

肉体的には逆走していくベンジャミンだろうとその他の平凡な人たちだろうと、その点では、誰にとっても時間は平等なんだろう。

この映画はそれを伝えたくて、主役だけじゃなく、多くの登場人物の生と死を同時に描いているんじゃなかろうか。

と思うんすけど、どうすかね?
ゆーさく

ゆーさく