美空ーめん

ベンジャミン・バトン 数奇な人生の美空ーめんのレビュー・感想・評価

3.4
美術館に入って端から端までゆっくり観て歩いたような、芸術のような映画でした


冒頭から全体を通して悲劇であるのは間違いないのだけど
数奇な運命を背負う悲しげな主人公に対し
彼を支えるまわりのパワーがすごい。
多少強引なまでに、人生の楽しみ方を教えてくれるその人たちが全員
ものすごく魅力的だった

そして必ずつきまとう、死。
どんなに強く明るい人でも、志しある人でも
この映画では息をするかのようにひとり、またひとりと亡くなっていく。

「みんな同じところに向かっているのよ。違う道を歩いているだけで。」
人間は生まれた瞬間に死へと向かって進む。
最も重いテーマなのに、
この映画にはそれを忌み嫌ったり、
恐れて避けようとしたりする人がいない。
訪れる迎えを受け入れ、向き合って生きる人々の強さがまた
美しいと感じられ、
どこか心地よく優しい気持ちになれる。


少しがっかりした点を言うとすれば
青年期を終えたベンジャミンが
歳をとって少年の姿になってからラストまでが
駆け足、というよりむしろ猛スピードで爆走しすぎて
かなしみに寄り添う暇もなかった。

もう少しもったいぶってもよかったのではと思うけど
あれ以上描きようがないのも分かる気がするし
彼の死だって、彼女の死だって
なにも特別なものではない。
人生を全うした一人の人間が
みんなと同じように、儚く、静かに
ただただひっそりと眠りにつくだけ……
そんな雰囲気だったのかなあ。
美空ーめん

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