のら

ベンジャミン・バトン 数奇な人生ののらのレビュー・感想・評価

4.0
主人公が老人として生まれ赤ん坊として死ぬ。この設定だけを見ると出落ち感の強い映画に見えてしまう。

しかし本作はスコット・フィッツジェラルドの原作にフォレスト・ガンプの物語を流し込んだ、実質的なフォレスト・ガンプのリメイクになっている。

フォレスト・ガンプと違いベトナム戦争やリフレクティング・プールでの再会といった大きな盛り上がりは無いものの、主人公をヒロイックに描くのではなく、最後まで悩める異分子として描く事によってポール・トーマス・アンダーソンのマグノリアのような構成で観客を引きつけている。

また主演のブラッド・ピットの特殊メイクにばかりに眼が行くが、ケイト・ブランシェットの説得力のある肉体もまた素晴らしい。特に大人になったブラッド・ピットと最後の再会を果たすシーンでの肉の付き方が、歳をとったバレリーナのそれで、若返っていくブラッド・ピットと年老いていくケイト・ブランシェットという対比が調和を伴っており、見事なシーンに仕上がっている。

確かにフォレスト・ガンプのように派手なシーンや印象に残るシーンは少ない。しかし落ち着いたトーンでありながらデビッド・フィンチャーの演出力で人が産まれそして死ぬまでを描いた大河ドラマに仕上がっている。
のら

のら