喜連川風連

ベンジャミン・バトン 数奇な人生の喜連川風連のレビュー・感想・評価

3.5
「生きるとは死への旅路。
みんな最後はおむつをはく。」

みんなが歳を取る中、1人だけ若返るとどうなるのか?という思考体験。

しかし、過去の日記の音読という形態を通して、押し切ろうとする強引な展開が目立つ脚本。

彼だけが若返る理由が最後まで曖昧で、
さらに周囲の人々がそれを自然に受け止め過ぎているため、観ていてニセモノ感が凄い。

パスポートは?戸籍は?など、地に足のついた描写は皆無に等しい。

加えて、日本の潜水艦が第1次世界大戦からのオンボロ船に乗り上げられただけで沈没している。

「バレエの話は聞いてなかったわ」と話す娘だが、バレエ教室を開いている時点で気づきそうな気もする。

ただ、それらをすべて棚に上げた上で主人公の人生を追体験できるのはいい体験だった。

誰と出会って、どこで何をしても、結局は死ぬ。
いつ始めても自由だし、何を見ても自由だ。

「結局は自分がどうしたいかなんだぜ」というテーマ性はある種、フォレストガンプっぽいなと思ったら同じ脚本家だった。

フォレストガンプもそうだったが、
努力したり何かやっても結局は上手くいく人たちの話なので、毎度ながら夢みがちな脚本。
いい話にしようとしすぎてる。
ケーキに砂糖を振りかけたような感じだ。

だが、それを上回るディヴィッド・フィンチャーの映像美。
ラストシーンの主人公と出会ってきた人物たちを職種名で振り返るのがとても良かった。

みな、眠るように死んでいく。
生まれた時と死ぬ時はみな1人。
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