松井の天井直撃ホームラン

リオの男の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

リオの男(1964年製作の映画)
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☆☆☆★★★


走る!走る!走る!走る!

追う!追う!追う!追う!

殴る!殴る!殴る!殴る!

飛ぶ!飛ぶ!飛ぶ!飛ぶ!

その目的はただ一つ。

〝 とにかく好きな女の子を助けたい 〟

…って言う単純な想いだけ。

サイレント喜劇のハイテンションをひたすら踏襲した、リアルなアクションのオンパレードに映画の真髄を見る思いで。その素晴らしい姿には、ただただ感動すら覚える。
それを感じたなら、どんなにストーリーがいい加減であろうとも、最早どうでも良くなってしまう。

それだからこそだろう、間違いなくスピルバーグは『インディジョーンズ』シリーズを撮るにあたって、この作品を参考にしているのが分かる。

ベルモンドがピンチに陥った時に、彼の相棒となる靴磨きの少年は『魔宮の伝説』でもあり、彼女が酔っぱらいながらのアクション場面も同じ。
更には飛行機の操縦までする。
まあこれに関してはその後の展開がちょっと違うし。当時スタントマンなしのアクションを売りにしていたベルモンドでも、流石に本物の飛行機を操縦するのは無理なので。編集で巧みに誤魔化してはいますけどね💦

でも、ジャングルの奥深く入って行く時に、船にしがみつく辺りは。少しばかり潜水艦の場面に置き換えてみたら似ている…とは思う。
何しろラストの《3体の土偶》を使う宝探しの場面等は、スピルバーグがシリーズ1作目の冒頭で「僕ならこうするよ!」…とばかりに、参考にしているんじゃない?って、スクリーンを観ながらつい思ってしまった。

ジャッキーもベルモンド映画好きを公言してますけど。この作品自体がバスター・キートンを踏襲している訳で。

【ただひたすらに好きな女の子の為に命を張る】

そのコンセプトは後々のジャッキー映画にも通じている。
本編のクライマックスアクションで、ベルモンドが大木につかまりながら上から降りて来る場面等、そのままジャッキーは以前に使っていたんじゃなかったっけ?

正直に言ってしまうと、中盤でちょっとだけウトウトってしかけたのですが。途中の建設現場でのアクション場面以降はもう目が離せない。

現在のアクションシーンだと、超絶な危険アクションが目白押しで、目が離せないのは勿論の事。
その為にCG等をふんだんに使っているのが普通。
あのトムクルでさえ、自らスタントは使わなくてとも命綱だけは使うのに。ベルモンドは命綱すら一切使わないんだから^^;
観ていて本当に怖いんだよ〜ベルモンド〜!

そんな怖さが満載なアクションコメディーでありながら。映画自体の、のんびりとした口調と相まって。その凄さが、現在の若い観客にはなかなか伝わりずらい…って言う、、、


寧ろ「いやいや雑だなあ〜!」と何度も画面に突っ込みつつ。そのいい加減さ、、、

ゴホン、もとい、、、

そんな楽しさに身を委ねているだけで幸せな気分にさせてくれる稀有な傑作なんですよね〜。

酒場での大乱闘場面なんか、直接中身に関係ないけど、観ていて「このどうでもよさがコメディーリリーフとして大事なんだよなあ〜」…と。

本当に死んじゃったんだよなあ〜ベルモンド!

御大、本当にお疲れ様でした。
今後も御大のスピリットは、世界中の映画人の手で活かされて行くと思います。
天国で笑いながら見守っていて下さい。


2021年10月16日 キネマ旬報シアター/スクリーン1