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八甲田山のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

八甲田山(1977年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

本作は過去に実際に起きた八甲田山遭難事件、新田次郎の歴史小説『八甲田山死の彷徨』をもとにした映画である。この歴史事件に関しては小説の感想を自分用に残した際に所感を述べてしまっているのでここでは省きたい。

小説と映画、最も異なるのは徳島大尉の描き方である。小説では彼の良し悪し両方を描いていたが、映画では完全なる英雄として扱われていた。ゆえに神田大尉とのコントラストが際立ち、作品にわかりやすさが出るのはたしかにそうなのだが、史実を学び、小説を読んでいる私にとってはリアリティに欠け、作品に入り込むことができなかった。

その一点を除けば、本作は実に良い作品である。演者が豪華かつ演技が上手い。演技が上手いというのは小手先のテクニックの話ではなく、ひとりひとりの役者がまるで登場人物の生き写しのような、演者自身のエゴを良い意味で殺している上手さである。日本の近代文学を原作とした邦画の中では最も高いレベルの作品であることは間違いないだろう。
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