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八甲田山のmitakosamaのレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
4.2
大日本帝国による八甲田雪中行軍遭難事件を追った歴史ドラマ。八甲田山は日本人みんなこの映画で認識したといって間違いないでしょ。それくらいに影響を与えた偉大な映画だ。

日清戦争に勝った大日本帝国陸軍は、日露戦争を踏まえた冬期訓練として八甲田山での雪中行軍を決行。
無謀な計画による遭難で200人もの犠牲者を出した史実だ。ホント当時の日本軍って頭オカシイ。

雪中行軍の任を背負う事となった徳島・神田の両大尉に高倉健と北大路欣也。
良識派の二人は会って早々馬が合う様子。でも結局は体制に飲まれちゃうのよね。
二人の隊は青森側と弘前側から登り始める。

村人の反対を押し切り、案内も拒否し無法な登山を決行。しかも神田の青森側は上官である少佐(三国)がしゃしゃり出て、危険な方危険な方へと誘導される。ヤバいなぁ。

案の定、みんなバタバタ凍死する。気付いた時には後の祭りだ。
70年代後半から80年代にかけて、大日本帝国をモチーフにした戦記物大作映画が続いたが、今作の持つ意味は大きい。どうしても軍国主義を美化する傾向があり、個人的には抵抗ある作品が多いのだが、今作は別だ。
ただただ軍国主義によりおこされる戦争が無益である事が、映画を通しストレートなメッセージとなっている。

そして伝説となっている過酷なロケだ。撮影の木村大作により後々語られているが、尋常じゃない映画製作に挑んだ事が、そのままフィルムに焼き付いている。こんなムチャはこの作品が本当に最後だったろう。

雪の進軍が虚しく響く。雪の進軍氷を踏んでどれが河やら道さえ知れず 馬はたおれる捨ててもおけず 此処は何処ぞ皆敵の国。
軍国主義の愚かさがそのまま結晶化した、全ての制作者に対し敬意を払いたい傑作。
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