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八甲田山のHKのレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
3.7
新田次郎原作の実際にあった事件を題材にした小説を実写化した作品。監督は「首」「日本沈没」などの森谷司朗。脚本は巨匠、橋下忍。撮影は木村大作。キャストは高倉健、北大路欣也、三國連太郎、加山雄三などなど

日露間の関係が緊迫している中、北方での開戦に備えるため、第八師団は二つの隊の中隊長に八甲田山での極寒対策を調査するための雪中行軍を提案した。それに賛成した二人の中隊長のうち、一方は長距離のコースを少人数で、もう一方は小距離のコースを少人数で行くという計画を決めた。しかし、上層部がもう一方のコースを貧弱と捉え、勝手に大人数を加えての進軍となってしまう。果たして二つの隊の運命はどうなるのか。

山なめんなよシリーズの日本の定番でしょう。冬の八甲田で、白い地獄を目の当たりにする隊員たちの哀れな末路を、二つの隊を対照的に映しながら、芥川也寸志の哀愁漂う荘厳なメロディーで物語る大作邦画の金字塔です。撮影秘話なんか聞いたりすると、その撮影での過酷さも相まってなんか酷評しづらいような作品なんですがね。

実際思ったよりは、悪くないです。「一寸先は闇」「油断大敵」をそのまま表したような二つの隊の全く異なるラスト。遠足気分で行ってみたらまさかの地獄絵図。体内温度が上昇し、それに耐えきれず発狂して衣服を脱ぎ棄て死んでいく隊員、雪崩や急斜面でずるずると落ちて足も折れて死んでいく隊員たちを観ているだけで、山の怖さを体感することができます。

それでいて、一番の怖さである雪山での凍死。立往生する輩もいれば、そのままどさっと倒れていく人間。小便漏らして死ぬ人間。色々といますがやはり怖かったです。

そして挙句の果てに道に迷い「天は我々を見放した!」ですからね。絶望的な展開は大好きなのでそこはとても良いんです。

ただね、ここで一番衝撃的で何よりの見せ所は「210人もいた軍人が最後は12人になってしまった。」というこの異常なまでの人の減り具合ですよね。しかし、死ぬシーンが印象に残っても、段々とメンバーが”減っていく”恐怖がじわじわとやってこないんですよね。どうせなら、人数確認とかのシーンを入れて、今何人死んだのかというのを段階的に見せるような展開にしたほうがもっと映画内の緊迫感が伝わったのかもしれません。

それでいて、この映画はいうなれば災害映画なのに、ヒューマン映画みたいな要素まで入れてきちゃうんだからいけ好かない。まあ大俳優を大量に使っているから致し方ないのかもしれませんが、高倉健と北大路欣也の友情のシーンとか、緒形拳の回想シーンとかいるかな?って思っちゃうんですがね。

な~んか日本のディザスター映画って、何故かこうヒューマン映画になっちゃう例が多いですよね~。大作邦画になって名俳優を大量に動員すればするほどその傾向になりがちだと思います。別にあんたらの個人的な問題とかどうでもいいから災害の悲惨さを見せてくれやって言いたくなりますわ。

それと、これはよく言われてるけど顔が黒塗りになっちゃって判別できねえww。大作さんも気にしていたようだし、ブルーレイでちゃんと判別できるようになったのは良いことだと思います。

散々な言いようですが、扱っている題材が暗く、怖いシーンはしっかりとホラーをしているため、この点数にします。ヒューマン要素を悪く言いましたが、健さんの涙はとても良いのでそこは高評価。邦画らしい大作邦画だと思いました。時間がある人にはお勧めしたいですね。
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