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示談屋のotomisanのレビュー・感想・評価

示談屋(1963年製作の映画)
4.4
 示談屋が示談組織へ敵討ち? 示談屋の息子を亡くした示談屋が息子のいた示談屋を突き上げて示談金1万円。あの鼻息でこの終いかよ。んな訳きゃあねぇよなぁと思いつつ、全くトホホな話ばかりで見てる方もしょぼくれてしまったが、ああ親子だなあと心に沁みる掌編。
 とびだすなクルマはきゅうにとまれない。と言われて育ったものだが、まだ切実さがない時代らしい。激情に駆られとびだしてトラックに当たって死亡する女と男。今なら馬鹿だなあで見過ごされそうだが、掘り返せば生き身の人の明るみ暗みのしかじかが見えてくるわけで、生臭い示談屋稼業跳梁の可笑しみと相まって、人情噺のよさがにじむ。
 死んだ二人が会う多摩川っ縁に昔のでっかい大師橋が見える。これは交通戦争前夜。無保険運転も少なくない時分なんだろう。保険はシステム的洗練も補償金額の向上も成され事故処理の改善は隔世の観があるが、当事者同士の接触と交渉は欠く事ができない。今ならどんな物語が書けるのだろう。
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