エリオット

黒い十人の女のエリオットのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
4.2
市川崑の大映での充実期を代表する一本。

冒頭、夜の闇のなか、1人の女の後を別の女が尾けている。
かと思うと、道の脇の暗がりから2人、3人と女が湧いてきてその後ろに続いて行く…
尾行に気付いた女が走り出すと他の女たちも走り出す。そして行き止まりに。
数えれば1.2.3…8人いる。
そこへ車から降りてもう1人、そしてなぜか塀の上にもう1人…いきなり「黒い十人の女」だ。

優しいけれど何を考えているか分からないTV局のプロデューサー(船越英二)と10人の女たちの物語。
女同士の会話、特に正妻(山本富士子)と愛人1号(岸恵子)がストレートウイスキーを酌み交わしながら、いったい何を使って夫(男)を殺すのがいいか嬉々として会話するシーンなど、随所に黒い笑いが散りばめられる。

和田夏十という人はほんとにクールな人だったらしく、本作でも愚かな男と女たちを一歩引いたところから突き放して描いているし、他の作品でもそうだが安易に盛り上がるようなラストを書くことは恥ずかしいと思っていたに違いない。
そんなところが、照明や人や物の配置などをいかにモダン(当時の最先端)にするかしか興味のなさそうな監督にとって、妻という以上にかけがえのない存在にしていたのだと思う。

金田一シリーズもいいが、このころの方が絶対格好良くて好き。
エリオット

エリオット