カラン

黒い十人の女のカランのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
4.5
話しがめちゃくちゃ面白い。『穴』よりもよいかな。あれの京マチ子もかっこよかったけれど、船越英二の役もこっちの方が多いし、有名女優もたくさん出てきて、モノクロームのカッコいいショットがたくさん。

ただ、市川崑って超越が下手くそというのかな、そういう観念がないのかな。「はいっ、今、超越しましたよ」って説明しちゃってるんだよね。それじゃあ超越にならないし、芸術的な感性は刺激されないな。この映画はコメディータッチなわけだけれども、ロッセリーリの『殺人カメラ』だってもうちょっとうまくやっていた気がするけどな。市川崑はホラーっぽいのもたくさん撮ってるし、『雪之丞変化』とかと同じく、この映画にもゴーストが出てくるのだけれど、ベルイマンとか鈴木清順の異世界の導入の仕方、つまり超越の仕方からすると、なんかしょぼいんだよなあ。もしかしたら、そこが市川崑の一般的な人気の秘密なのかもしれないけどね。ついてけないと、「分からない」、だから「ダメな映画だ」って短絡する視聴者は昔からたくさんいただろうからね。ふーむ、彼の横溝正史シリーズを久しぶりに見返してみるとするかな。

まあ、超越はいまいちだったけど、フェリーニの女に囲まれて拳銃で頭を撃ち抜く男の話である『8.5』が1963年だからね。同じく女に囲まれて拳銃で撃ち殺される、この市川崑の『黒い10人の女』はそれよりも早く1961年。うーん、オリジナルな物語だなあ。日本のマルチェロ・マストロヤンニですね、船越英二は。マストロヤンニ扮するグイドが気に入らないっていう人はたぶんたくさんいるんだろうが、この映画の風ちゃんこと船越英二はさらに気に入らない人が多そう。そういうわけで、さしあたり10人の女が集まって、風ちゃんの殺害を企画する。それに対する風ちゃんの感想は、「分かんないなぁ。僕のことなんて放っておけばいいのに。」
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