マヒロ

黒い十人の女のマヒロのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
3.5
テレビ局勤めのプロデューサー・風(船越英二)は、結婚している身でありながら9人もの愛人を作るプレイボーイだった。妻を含めた10人の女は、そんな体たらくの風に愛想を尽かし遂には復讐を企てるが……というお話。

総勢10人もの女性に恨みを買うというとんでもない男・風だが、あんまり悪い奴のようには見えない。…というと語弊があるが、その悪い奴ではないというのがある意味この男の一番困ったところで、劇中で言われる「誰にでも優しいってことは誰にも優しくないってこと」というセリフが全てを表しているように、ちょっと気になったりした程度で誰彼構わず近づいてしまった結果、気づいたら愛人がやたらと出来てしまっていたような節があり、とことん考え無しな行動が原因で知らず知らずのうちにドツボにハマってしまっている。怒る女たちが喋りまくるシーンに風が別の所で呑気にデザート食ったり新聞読んでいたりするカットがインサートされる演出が笑えるが、この男どんなに深刻な時でも常にボケボケしており、どこか空っぽな人間のように描かれている。船越英二という人は他の作品でもこういう主体性のないフワッとしたキャラクターを演じていることが多いが、今作は一つの真骨頂なのかも。

対する10人の女たちは、怒ったり泣いたり喜んだりと感情を表したり自らの意思を持って行動したりと、幸せか不幸せかは別としてみな生き生きとしていて、何考えているのか分からない風と違う明らかに対称的な存在として描かれている。
彼女たちが最終的に風に下す決断は、単純に殺すとかよりも遥かに恐ろしい「人間性(もしくは男性性)の剥奪」とも言えるもので、ゾッとさせられるものがあった。
脚本の和田夏十は監督の奥さんらしいが、果たしてどんな気持ちでこの映画を撮ってたんだろう…。

(2020.16)
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