SPNminaco

ストレンジャー/謎のストレンジャーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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平穏なアメリカ郊外に潜伏するナチの残党、それを追って街へ来た男。2人のストレンジャーの攻防を彩る映画的な表現が豊かで面白い。パイプ、森の追跡ゲームと雑貨屋のボードゲーム、預けられたカバン、壊れた時計台と高い梯子。数々の伏線と象徴、光と影。そして追っ手に怯えつつ、虎視眈々と企むオーソン・ウェルズの鋭い眼光。冷酷な悪と姑息な人間臭さを演じるウェルズにはやっぱり惹きつけられる。同時に、彼の「論理」は未だに残党が絶えない現在に観るとむしろ生々しい。
やがて止まった時が動き出し、時が裁く。エマーソンの言葉通り雪が降り積もり、上った梯子は外せない。良心=キリスト教の倫理観というのが当時のアメリカ映画らしいが、それを体現する妻ロレッタ・ヤングの「もうイノセントではいられない」展開がなかなか凄かった。現実と対峙した彼女のそれまでと別人のような美しさ!サスペンス&アクションが凝縮したクライマックスも見事。
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