和桜

ストレンジャー/謎のストレンジャーの和桜のレビュー・感想・評価

3.5
アメリカの田舎町に潜伏するナチ残党を追い詰める様子を描いた、オーソン・ウェルズによるサスペンス映画。彼の作品としては少し点数を低めにつけたけど、戦後すぐに現代でも指摘される問題を描いてしまう辺りはさすが。近くにナチが潜んでいるかもという恐怖はなくなったものの、現代でも自分の父や祖父がナチだったことが判明し苦しんでいる子孫は存在してる。

反戦映画というよりも、容疑者と捜査官によるカマの掛け合いでナチスの考え方を炙り出していく。何気ない言葉や嘘に彼らの思想を垣間見せる会話劇の上手さ。
「罪を犯すと地面が雪に覆われる。発言は取り消せないし、足跡も消せない。手がかりを残すまいとしても無駄だ。」
こういう言い回しが好きすぎる。

編集はまたも違う人間が権限を握っていたらしくかなり酷い。監督自身もこの作品を気に入ってないらしいけど、陰影の付け方や縦横無尽のカメラワーク等、彼のエッセンスは充分に詰まってる。正体を知りゾロゾロと集まってくる町人の動きなんかはフリッツ・ラングっぽい。ここでのクレーン撮影が『黒い罠』に繋がったのかな。
常に町を見下ろす存在であり、クライマックスの舞台でもある時計台は絵としても圧倒的で素晴らしい。
和桜

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