改名した三島こねこ

サボタージュの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

サボタージュ(1936年製作の映画)
3.4
<概説>

刑事と破壊工作員の騙くらかしあいは、破壊工作員の娘を起点としたことで予想だにしない展開を迎えることに。果たして刑事は卑劣なテロリズムを防ぐことができるのか。

<感想>

一見終盤のメロドラマに注目しがちですが、作品全体としては非常に陰鬱。題材のテロリズムは一方的な善悪の判断が難しいものですし、その過程にある犠牲には目を背けたくなります。

そのうえこの陰鬱さは妙にリアルなのです。

例えば映画チケットの払戻しの一幕。

現代ならチケット代程度で暴動が起こるわけないと笑ってしまいそうですが、しかし事実笑えない程度には人々は荒んでいます。

チケットひとつでこれなら、困窮した世にテロリズムを企てる連中が現れてくるのも宜なるかな。他にも随所で人々がピリついていて、サスペンスとは別の要因から胃が痛い。

さてこれはどうしたことかと時代背景を調べるとーー

公開年度は世界恐慌の只中。なるほどそれならこの題材が人民の評価を受けるのも納得です。それこそ2019年の『パラサイト』が評価された理由のひとつもそれ。

芸術作品は時代背景の影響を受けるもの。

それならばこのように作品から時代背景研究に移行するのも、またひとつ乙な楽しみではないでしょうか。

正直私は世界恐慌の年数なんて忘れていましたし。