イチロヲ

サボタージュのイチロヲのレビュー・感想・評価

サボタージュ(1936年製作の映画)
4.5
善良な映画館経営者を装っているテロリストを捕らえるべく、特有の千里眼を持つ警察官が、潜入捜査を敢行する。ジョセフ・コンラッド著「密偵」を映像化している、サスペンス映画。

筆者は中学1年生のときにテレビ放映で初鑑賞したのだが、例の「少年のシーン」があまりにもショッキングだったため、しばらく荷物を届ける仕事を引き受けることができなくなってしまった。そういう意味では、個人的なトラウマ映画。

閑話休題。本作では、真犯人が映画館の支配人でもあるため、舞台のほとんどが映画館内で進行する。当時の映画館を取り巻く風俗が映像に収められており、夫の裏の顔を知らない若妻が、人間不信に陥っていく過程に醍醐味が集約されている。

若妻に共感できるようになっているため、良い意味で判官贔屓が働いた状態での鑑賞を楽しむことが可能。例の「少年のシーン」により批評家の評価は低いが(ヒッチ自身も後悔している)、「映画でショックを受けたい側」からすると最高級の作品といえる。
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