ぼぶ

ラスト・キャッスルのぼぶのレビュー・感想・評価

ラスト・キャッスル(2001年製作の映画)
4.0
とある大きな城。守備隊もいるし、高い壁もある。
ただし、攻め込ませないのではなく、中から外へ出さない城、そうそれは刑務所であった。

そもそも刑務所内での、看守vs.囚人という構図は色んな映画に存在して、看守にしろ囚人にしろ色んなキャラが出てくることから、個人的には色んなキャラ立ちした人々が、適材適所で活躍するお話は好きなので、自然と面白くなりがちである。
今回はそんな刑務所に更なる面白設定が加わるのだが、それは“軍”刑務所であること。
となると必然と、看守も囚人も、軍人であったり元軍人であったりするわけだ。

そんな軍刑務所へ、誰しもが士官学校時代から存在を学ぶくらいの憧れの、スーパーカリスマ大軍人が入ってくる。
その彼は渋く、人柄も良く、筋の通った男なだけに、初めはいつ自殺するか賭けてた他の囚人たちもやがてその魅力に惹かれて、軍人の心と誇りを取り戻していく…でも、この刑務所を仕切る所長の大佐はすごーく嫌なやつだった。
さて、そんな中、囚人たちはどうする…といったお話。

かなり面白かったのだが、一つ最初に文句をつけるなら、もっと中将の具体的な過去の凄さや偉さとか、家族との関係性とか、刑務所送りになった理由(作中で説明もあるし、内容はわかるけど)が、もっと詳しく語られて欲しかった。
もちろん獄中で発揮されるカリスマ性や人柄、皆の尊敬などから多くが伝わるのだけど、それらがあると、もっとお話に厚みが増しそう。

これを観ると、アメリカ兵の彼らにとって、いかに軍隊や軍人というものが誇りで、アイデンティティーで有るかというのもよくわかるし、それが故に所長の様に歪むのもわかる。
所長の大佐は、戦争での実戦経験がないというところを突かれて勘に触るのだが、単に嫌なやつってだけでなく、彼にはきっと中将への憧れや妬みなんかも混じっての行動だったのだろう。
それが毎回、中将と話すときの無理した笑みにも現れていて好演技だった。
映画としての、すごい男前vsブサイクなのはこれはもう仕方ない。

石のくだりはとても素敵で、無骨な彼らを表しているかのよう。
左官の息子の彼の石と遺志をぶちこんだところは本当に爽快だったなー!
あと毎回賭けに負けるストロングなおじさんが好きだった。
そして、倒れ込む時の、空の青さが印象的であった。

観賞後のスッキリ感と、男に生まれて良かった感がすごい。
髪をかきあげる時は、高く高く掲げられた誇りと旗に敬礼する気持ちになりそうな、一作。
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