こたつむり

さんかくのこたつむりのレビュー・感想・評価

さんかく(2010年製作の映画)
4.1
底辺×高さ÷2。
『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督作品。

若い頃のヤンチャを引きずる三十路の主人公。
彼と同棲していて交友関係と視野が狭い彼女。
そして、その彼女のワガママな妹(中学生)。

この三人の関係性を描いた物語…なのですが。
典型的な“三角関係”の物語ではないと思います。どちらかと言うと、高さの概念を持つ一点が底辺にある二点に影響を及ぼす“三角形”という印象。だから正三角形ではなく二等辺三角形なのですな。

そして、その二等辺三角形の中身は。
エロい、エグい、エラい物語でありました。

まずは“エロい”ですけども。
冒頭からして女子中学生のミニスカートを強調する映像から始まり、肉感的な胸元だったり、子供と大人の中間の無邪気な色気だったり…と成人男性を困らせる展開が繰り広げられるのです。「けしからん、もっとやれ」と誰かが言いそうな雰囲気であります。

次に“エグい”ですけども。
その女子中学生がトイレに入る場面で“音”がするのです。物語に“現実感”を与える演出なのですが、「そのために選択する表現がコレなのか」と思わず言ってしまうほどにエグいと思うのです。他にも現実感を与える選択肢はあると思うのですけどね…。

そして“エラい”ですけども。
主人公も彼女もその妹も。周囲が見えなくなるくらいに集中する人たちなのです。その姿は滑稽を通り過ぎて哀れだったり、イタかったりするのですが、その全てを他人事として笑い飛ばせないのがエラいのです。これは、先ほどの“現実感”を与える描写を細かく積み重ねたからこそ発揮する没入感なのです。

まあ、そんなわけで。
安定した形の正三角形ではなく。
二等辺三角形だからこその物語。よくある三角関係の恋愛映画…とは一味違います。ほんの少しの距離感を変えるだけで、ここまでの面白い作品になるとは…いやはや、吉田恵輔監督は只者ではないですな。

その非凡なる才能の片鱗は。
高岡蒼甫さん。小野恵令奈さん。田畑智子さん。
この三人の持ち味を十二分に引き出しているところにも表れています。吉田恵輔監督は今年で42歳。脂が乗りだした良いお年頃。今後が楽しみであります。要チェック。
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