福福吉吉

仕掛人梅安の福福吉吉のレビュー・感想・評価

仕掛人梅安(1981年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
藤枝梅安(萬屋錦之介)は鍼医者の傍ら、金を貰って対象を殺す仕掛人であり、町で殺人などの横暴を働く安部主税之助(中尾彬)の仕掛けを請け負う。梅安は主税之助の殺害に成功するも女中のお咲(真行寺君枝)に目撃されてしまう。一方、主税之助の父である安部長門守(中村勘五郎)と弟の関係にある近江屋佐兵衛(伊丹十三)は江戸の闇家業を牛耳ろうと梅安たち江戸の仕掛人を傘下にしようと動く。

◆感想◆
大坂から江戸にやってきた近江屋佐兵衛の陰謀に梅安ら江戸の仕掛人や関係する女性たちが巻き込まれていくストーリーとなっており、関西弁を自然に放つ伊丹十三の演技の凄みとそれに負けない梅安演じる萬屋錦之介の気迫が対立する構造は観ていて心にじわじわと熱くなる感じがありました。

主人公の藤枝梅安は日常ではとても明るく気さくな鍼の先生として通っていますが、仕掛人としての梅安は無表情で冷たい感じになっており、その落差が魅力的でした。梅安は江戸の元締めである音羽屋半右衛門(藤田進)の依頼のもと、彦次郎(中村嘉葎雄)を相棒に仕掛を行います。この相棒の彦次郎は梅安と一蓮托生の関係にあり、ターゲットの調査や仕掛けの補助を行い、梅安に負けない存在感があってよかったです。

本作の最大の敵となる近江屋佐兵衛は商人であるとともに大坂の闇家業の元締めとして幅を利かせており、江戸進出して闇家業を始めようとします。兄であり旗本である安部長門守をも手中に収める大物感がとてもあって、常に何かを企んでいるような不敵さを感じました。私は伊丹十三というと監督のイメージがあるのですが、本作の伊丹十三は役者としての凄さを認識することになりました。

ストーリー上、かなり登場人物が多いので、前半は把握しにくい部分がありました。しかし、近江屋佐兵衛がフォーカスされていくうちにストーリーが単一化されて理解できるようになっていました。

ストーリー後半では梅安にも危険が迫り、その中で佐兵衛の妹であるお園(小川真由美)との関係がひとつまみストーリーに変化をつけていて、ただ悪を滅ぼすだけの単調な展開でなく人間関係の不条理さを交えた悲しさを感じることができるものになっていました。

なかなか面白い作品で、出来ればもう一作ぐらい作ってほしかったですね。

鑑賞日:2024年3月13日
鑑賞方法:BS日テレ
(録画日:2023年4月30日)
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