河

朝から夜中までの河のレビュー・感想・評価

朝から夜中まで(1920年製作の映画)
4.0
表現主義映画特有の平面的な演出が突き詰められていて、その中にトリッキーで幻想的な演出がある。カリガリ博士と同じ年の映画だと思えない。

貧乏でありふれた家庭を持つ銀行のキャッシャーとして働く男が、他の国から訪れた美女に一目惚れして銀行の金を盗んでその金で女と付き合おうとする。その女は金持ちで息子もいるので失敗して都市に逃げる。そこからはひたすらその金を使って都市を徘徊していく話になる。何度か女性に近づけそうになるけど、その度にその女性が屍に見えて逃げる。結局金を使って得た物は全てすぐに自分から離れていく。金の虚しさに気づいたことによって、遂に屍に見えた女性と一緒にいようとする。結果その女性は懸賞金目当てに通報し、それが男の死に繋がる。
前半での犯罪により全てを失って詰んだ状態から、終わりが見えてる中徘徊する、その間に何かを学んでいくけど最後は完全に破滅する話。時間としてはタイトルの朝から深夜、1日の話になっている。wikiにロードムービー、街・ストリートについての映画のはしりって書いてあってそうなんだと思った。

基本的に黒背景で、平面のセットがあって、立体的なものがあっても化粧やセット含めて全てが太い線で縁取られていることによって全てが平面的に見える。マティスみたいな。さらに大袈裟で止めの演技が多いので、絵としてかなり強い瞬間が何度もある。
黒背景に浮かぶようなセットが現れて、時計と共に窓口がコマ送りで開く、そこに主人公が幽霊のように出勤してくるっていう冒頭のシークエンスが最高。倒れた女性が絵画のように浮かんでさらに裸に見えるところ、自転車レースが球体の鏡のようなものに反射する形で歪んだ速度で回転していくところも印象的だった。
絵画のタッチや回転など何度か出てくる未来派的なモチーフとこの全体の演出のトーンがどう繋がってくるのか、そもそもこの話でなんでこの演出なのかがあまりわからなかった。
河