KUBO

どついたるねんのKUBOのレビュー・感想・評価

どついたるねん(1989年製作の映画)
3.8
昨日、赤井英和のドキュメンタリー『AKAI』を見た流れで『どついたるねん』を鑑賞。

『AKAI 』に続けて見ると、余計に不思議な映画に思えた。引退した後の赤井英和のパラレルワールドを見るように感じて。

引退後に、赤井英和自身が書いた自伝『どついたるねん』にインスパイアされて、当時まだ30歳だった阪本順治が初めて監督した作品が、この『どついたるねん』。

いきなり因縁の「大和田正春」戦の再現から始まるし、マジでドキュメンタリーの続きかフィクションかわからなくなる。

引退後、リアルの赤井は本作で俳優デビューするのだが、この作品の中の赤井英和(作品内では安達英志)は自分のジムを持つもうまくいかず、ボクサーとしてのカムバックを目指す!

もちろん、頭部を切開しての手術後に、ボクサーとして復帰するのは自殺行為なのだが、それでもこの映画の中には、叶わなかった夢に縋り付く、もう一人の「赤井英和」がいる。

赤井は本作でキネマ旬報の新人男優賞を受賞、俳優としての再スタートを切る。その演技はまだ素の赤井英和のまんまなんだが、それがまたフィクションをリアルに見せる要因にもなっていておもしろい。

その新人俳優「赤井英和」を支えるのが、名優「原田芳雄」。安達を陰で支える名コーチを渋く演じて、作品自体も支えている。

また、作品内で輪島功一、渡辺二郎など、かつてのチャンピオンが登場するのもボクシングファンには楽しい。

『AKAI 』の公開に併せて、この『どついたるねん』も再映が決まっているそう。できれば私と同じように『AKAI』を見てから『どついたるねん』を見てみてほしい。赤井英和の本当の人生と、もしかしたらこう続いていたかもしれないパラレルワールドを両方体験できる。
KUBO

KUBO