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テンダー・マーシーのSIのレビュー・感想・評価

テンダー・マーシー(1983年製作の映画)
5.0
2021.9.14
自宅TVにて鑑賞

テキサス州。アル中で落ち目のカントリーシンガーの男は、ハイウェイ脇でモーテルとガスステーションを営む未亡人と息子の少年のもとで働き始める。離婚した妻との間の娘への執着や、ショービジネスへのカムバックへの執着に苦しみながら、信心深い未亡人と結婚しささやかな生活を始める。娘はかつての主人公と似た男と付き合ったことで死亡してしまうが、主人公は立ち直り、少年から父親として認められる。

ブルース・ベレスフォード監督。ロバートデュヴァル。
傑作。素晴らしい映画。
ショービジネスで大きな幸せを追い求めていた男が、小さな幸せの価値に気付くまでを、劇的ではなく静謐なリアリズムで描く。
テーマは、人生はやり直せるということ。成功を失った歌手。夫を失った未亡人。父親を失った少年。不条理にも生き様を変えねばならなくなった者たちの心の交流と再生。
少年と主人公が洗礼を受けた後の帰りの車。「なにか変わった?」「まだだね」笑顔で語る三人。
大きな波乱も喜びも描かれないが、それこそが実生活。悲しすぎる過去に爆発しそうな感情を必死に耐え、逆に日々の小さな喜びに笑顔をみせる主人公たちの姿が、尊い。

ブルース・ベレスフォードは初めて観たが、PTA的。遠景カット、マスターショットより更に引いたFIXの長回しが多い。
掘っ立て小屋のようなガソリンスタンドがメインの舞台なのに、あそこまでカットを切り出すとは凄い。
編集のテンポ感が唐突で意外性がある。どのシーンも短く、台詞量も少ないのが好みだった。

ロバートデュヴァル、こんな役柄も出来るとは知らなかった。引き出しが多い役者。

音楽も良い。

大好きな映画になりました。また観ます。
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