KazuIrie

ミュンヘンのKazuIrieのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.0
1972年9月、ミュンヘン五輪で起きたパレスチナ武装組織”Black September”によるイスラエル五輪関係者11名の殺害事件(俗に言う黒い9月事件、ミュンヘンオリンピック事件)、及びその後のイスラエル諜報特務庁「モサド」による報復作戦「神の怒り作戦」を、そのリーダーとして率いたアヴナーを中心に描いている。
殺害されたイスラエル五輪関係者11名に対する報復としてパレスチナ側のテロ首謀者を11名に絞り暗殺計画を粛々と進めるイスラエル政府(当時のゴルダ・メイア首相を中心とした秘密委員会にて決定)は、まさに「目には目を歯には歯を」。翻って、元々のテロの目的もイスラエルに収監されたパレスチナ人234人の釈放請求であり、恐らく夫々の立場なりの正義を、誤った形で表現した結果だと思う。
また、本作品は所謂「俺は殺し屋暗殺なんて朝飯前」という描き方ではなく、作戦を通して暗殺したシーンが脳裏に焼きついて、また、自分の命も狙われているのではとノイローゼに近い不安に駆られる主人公の姿も描いており、よりリアルを感じる。
史実に基づいた出来事であり、それを音と映像と描写で見事に描いた点は素晴らしいの一言。そして何より、正義と正義のぶつかり合いを、人の命を奪うことで表現しては絶対にならないということを伝えてくれる。
出演者にはダニエルクレイグに加え、007でドミニクグリーンを演じた仏俳優マチューアマルリックもキーパーソンとして出演しており、007が過去作品での演技も含め役者を選ばれていることも窺える。
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