山岡

引き裂かれたカーテンの山岡のレビュー・感想・評価

引き裂かれたカーテン(1966年製作の映画)
3.7
スパイ風映画ではあるが、主人公はプロではなく、素人。どちらかというと『逃走迷路』『北北西に進路を取れ』『知りすぎていた男』の系譜に連なるサスペンスだと思う。過去作の主人公は自分の意志とは違うところで事件に巻き込まれるが、今回の主人公は自ら事件に介入していく…主人公ポールニューマン米国の兵器開発に従事する科学者で、研究の行き詰まりを打破するため東ドイツの科学者の技術を盗もうとして渡航する。この特殊な設定から、これまでの『巻き込まれ型サスペンス』と違い、ピンチになっても自業自得であるため主人公に感情移入しづらいのが本作の欠点。加えて、007で例えるならボンドガール的役どころのジュリー・アンドリュースが色気ゼロなため、ただのお邪魔虫にしか見えない。ヒッチコックのサスペンスにとって重要なスパイスであるロマンスが全く機能していないのは彼女のせいだろう…とまあ、悪口ばかり書いたが、前半のスパイ風サスペンスから一転、主人公とヒロインの逃走劇が展開される後半の流れがスリルに満ちており、魅力的。
本作の上映時間は127分で、87分くらいのところで主人公が東ドイツの科学者からアイデアを盗むのだが、残り40分はミステリーも何もない。ただ逃げるだけ。偽装路線バスを使った逃走は、「憲兵にばれるかも?」「乗客が誰か裏切るかも?」「本物のバスに追いつかれるかも?」という二重、三重のスリルが用意されており、飽きない。その後も、市内の郵便局、バレエ劇場、船とシーンと舞台が次々に代わり…多少くどい気がしないでもないが、いわゆるジェットコースタームービー的な作品としては申し分ない。

あるシーンで、ポール・ニューマン、そして我々観客をにらみつける、プリマ・ドンナの顔はトラウマもの。