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引き裂かれたカーテンのRのレビュー・感想・評価

引き裂かれたカーテン(1966年製作の映画)
4.0
ヒッチコックの作品の中ではかなり評価が低いけど、他のヒッチ作品と比べるから低くなってしまうのであって、単体で見ると堂々たる一作なのではないか。けどやっぱ比べちゃうよねー笑 本作は昔見たような気がしてたが、どのシーンも全く記憶になかったのでたぶん勘違い。今回が初。ヒッチコックらしい素晴らしいシーン沢山あるけど、たしかに、他のやつほどスリルやパッションがない。ストーリーは、最初はミステリー調で、婚約してる物理学者カップルが朝のベッドでイチャイチャしてるシーンから始まる。この二人アームストロングとシャーマンを演じるのが、碧眼がシビれるほど美しいポールニューマンとミュージカルと言えばのジュリーアンドリュース。ひょっとしてヒッチコック、このふたりが好きじゃなかったのかな?ってくらい、特にアンドリュースには全く魅力が感じられない。ヒッチコック映画の女優っていったらどれもこれも最も印象深いのに。前半は、国際会議出席のためにデンマークに着いたと思ったら、突然、アームストロングがひとりで鉄のカーテンの向こう側、東ドイツに向かうことを知るシャーマンからの視点でストーリーが進行。東ドイツまでこっそり彼に同行し、到着後なんで?って問い詰めると、核戦争を阻止しようとする東ドイツのグループに参加して、米国の核開発を止めるんだ、と言う、つまり、ロシアとの核開発競争に精を出す母国アメリカの政府に裏切りを働くというのだ。君はすぐに西側へ帰れ、と言い張るアームストロングに従わず、彼といることを選ぶシャーマン。しかし、アームストロングには何か別の思惑があるらしい…と言う流れで、まぁ、実はアームストロングが東ドイツの学者の頭の中から開発のための革新的な数式を盗み出そうとするスパイやねんけど、このへんはあまり意外性なく、ミステリーというよりは、カップルの心理的駆け引きの面白さがメインとなっている。で、後半は、果たして彼らは無事に東ドイツから脱出できるのか⁈というサスペンスが展開。本作の最も印象的なシーンはやっぱ前半にある殺人シーンでしょう。シンプルなスパイ映画とは思えない、病的なしつこさのあるシーンで、さすがヒッチコックの見事な演出力! テンション上がる! で、そこから、バレるかバレないか、公式ゲットできるかできないか、脱出に間に合うか間に合わないか、バス行けるか行けないか、と、緊張と緩和の連続、けど、他のヒッチコックほど居ても立っても感がなかった。主演二人のケミストリーと緊張とユーモアとがあまり噛み合わなかったのかも…ユーモア少なめやらかな? が、最高なのが途中に出てくるロシア系の婆さん。アメリカへの亡命を望んでるけど保証人がいない、頼むからなってくれと嘆願する演技が切実すぎてもらい泣きしそうになったわ。本作一のインパクトはこの婆さん。最後の切ない感じも心に残る。で、その後、本作のクライマックスに突入…! 最近見た順で、マーニー、フレンジー、本作、と概観すると、この作品を境に、明白に映像や音楽のタッチに変化があるなぁ、と思ったら、ナルホド、ここで主要メンバーがガラッと変わったようです。死んだ人も何人かいたそうで。本作までのゴージャスさも大好きですが、本作以降のよりリアリスティックなタッチも個人的には好きです。確かに他のヒッチと比べると落ちるけど、やっぱり名作のひとつにカウントされるに十分な魅力を備えたトーンカーテン、2回目の方が楽しめそうな映画かも、と思ったので、そのうちまた見直してみたいと思います。
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