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セイブ・ザ・タイガーのHKのレビュー・感想・評価

セイブ・ザ・タイガー(1973年製作の映画)
3.4
トラ年ですから・・・その⑤
ジャック・レモン(当時48歳)がアカデミー主演男優賞を獲りながら日本未公開という長年気になっていたタイトルをこのキッカケで初鑑賞。
う~ん、正月なのにまた地味で暗い作品をセレクトしてしまったようです。

‘70年代のアメリカ、中規模アパレル会社の社長(レモン)が、会社の資金繰りがうまくいかず延々と苦悩する映画です。
正月からこんな映画観るもんじゃありませんね。とくに中小企業の経営者は。
経営者じゃない私が観ても憂鬱になります。

J・レモンはそれまでの多くの作品でのコミカルな演技とは打って変わって全編に渡り悲哀漂うシリアス演技。
大きな事件が起きるわけでもなく、とにかく日常のルーチンをこなしながらも追い詰められていく主人公が痛々しく、ひとときでも現実を忘れるため古き良き思い出に逃避しようとしますが、ついには第二次大戦で戦死した仲間たちの幻覚まで見え始めます。

いくら演技が素晴らしくてもこの暗い内容では日本未公開は仕方ないところか・・・
本作が未公開のため、日本でレモンのシリアス演技が話題になったのは、しばらく後の『チャイナ・シンドローム』あたりからだったような気がします。

監督はなんと『ロッキー』で一躍有名になる前のジョン・G・アビルドセン(当時38歳)。
レモンが靴下がズリ落ちないよう男性用ガードル(?)を着用するシーン、工場に出社して部屋から部屋を延々歩き回る長回しなど地味ながら印象的なシーンは多々あります。

音楽はこの直後に『追憶』『スティング』『007/私を愛したスパイ』と続けざまにヒットを飛ばすマーヴィン・ハムリッシュ。

後半、街頭でトラを絶滅から救おうと呼びかけるボランティアが出てきてに主人公が署名するシーンがあります。ここでタイトルと繋がりますが、いったい何を訴えているのか?
とにかくやりきれない思いのまま映画は終わります。
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