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劇場版 ポケットモンスター 結晶塔の帝王のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
劇場版ポケットモンスター第三作。
小さな女の子が、親恋しさと寂しさ故に感情を爆発させる、心象風景具現化アドベンチャー風の、父と娘の関係性を描く物語です。詰まるところ、アンノーンが悪い。

無垢な願望が際限なく叶えられる全能感に酔いしれど、それはあくまで泡沫の夢。
夢は輝きを纏い、力強く他を跳ね除けるも、その静謐は孤独の裏表。
現実は土足で入り込み、目を背けさせてはくれやしない。

結晶塔は、今作のゲストヒロイン・ミーちゃんが、自分を守る為に生み出した、寂しい気持ちを覆い隠す現実逃避の夢想世界であると同時に、外界から隔絶された冷たい檻でもあります。

そんな中で繰り広げられる擬似的な父と娘の関係性・親子愛のドラマは、尺の都合上これ以上掘り進められないものではありますが、もう少し語ってほしいところ。

正直、〈父と娘の関係性〉だの〈親子愛〉だのと書いておいてなんですが、サトシとサトシのママが出張ってきて、なんとなく父と娘の成分が薄まっている気がします。

それと、エンディングで突然現れる顔の見えぬ謎の女性(ミーの母親らしい)にも混乱させられました。
ミーがエンテイに告げる「ママが欲しい」の言葉、実の母親が生きてるなら、当然そっちのママと捉えるべきですよね?
サトシのママを拐ってくるっては、エンテイの壮大なミスにすら思えますよ。
でも、ミーが喜んでるんだし、良いって事なんだろうか。
終わってから、ママを巡る紛糾って何だったの……と、ぼーっとしてしまいました。


そんなこととは関係なく、作中思わず注目してしまったのは、サトシの仲間たちによる、サトシへの戒めや援護射撃の的確さです。
一つは、タケシの状況把握力が抜群である点。
直情的で、思い立ったら周りが目に入らなくなるサトシを、身体を張って止める。
塔の内部潜入後、情報を総合判断し、大人の姿となったミーちゃんをたちまち見抜く洞察力。
自分が壁となる事で、仲間を前に進ませようとするその姿は、まさしくアニキ!
流石元ジムリーダー兼業主夫ですね。

一つは、カスミのお姉さんとしての思いやり。
ミーへ投げかける優しい言葉や、相手を認める発言はタケシも同様ですが、年上のお姉さんっぽく、快活に導く様は女性同士だからこそいい感じに見えます。
正直、映画全体において影は薄めですが、いざというときに頼れる姉御です。

も一つおまけに、颯爽と駆けつけるリザードンも高ポイント。
テレビにチラッと映ったサトシを見て、なんかピンチなんだと即座に理解し文字通り飛んできます。
いつもは憎らしく、サトシへの態度も生意気だった癖に、離れ離れになっても、彼らの友情は変わらない。
にくいねぇ、リザードン。

このように、母親を救い出す為に必死な主人公を、仲間たちの友情が陰日向なく支えてくれる。
仲間に恵まれてますねぇ、サトシさんは。
まあ、そっちを掘り下げてないで、ミーとエンテイ(パパ)についてもっと描いてくれていいんですけどね……。

【今回のゲスト声優】
エンテイ(シャリー博士)……竹中直人
渋い。圧倒的包容力を感じさせる親父さん像。「ミーがそう望むなら」ってセリフがすごく印象的です。

【今回のやまちゃん(山寺宏一)の担当】
デイビット……シュリー博士とミーのお屋敷の執事。
全然喋らない。「お嬢様」くらいしか言わない!
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