踊る猫

踊る猫の感想・レビュー

ベニーズ・ビデオ(1992年製作の映画)
3.9
撮影されたら手ブレも生々しく、再生されても粒子が荒い映像でしか映し出されることのない「ビデオ」の画像とミヒャエル・ハネケの映画本来のクールな質感の画像が溶け合って、曰く言い難い世界を作り出しているように思う。主人公のベニーは「ビデオ」の画像に没頭する人間、つまり「ビデオ」を通してしか現実と関われない人間なのだろう。だから彼は人を呆気なく殺す。ネタを割るのは慎むが、そんなベニーが自我の内側に閉じこもっていたのが、旅行に行ったことで「外側」つまり「リアル」を観たと解釈するのが妥当なのではないか? だから改心したのではないか……そんなようなことを思って観てしまった。もちろんこれはかなり単純化された感想でしかなく、「スジ」でしか映画を観られない私の限界なのだろう。飛び抜けた傑作、というのではないと思う。しかし、犯罪者の生々しい心理に敢えて淡々と客観的に触れた佳品として私には映った。