ごろちん

ベニーズ・ビデオのごろちんのレビュー・感想・評価

ベニーズ・ビデオ(1992年製作の映画)
4.0
ハネケ監督「感情の氷河化三部作」の二作目。こちらも中々の鬱映画です。

当然だけど「現実」は次の瞬間に何が起こるか分からない。

ところが、一度ビデオに記録された映像は既に起きた事柄へと瞬時に変わり、早送りも巻き戻しも出来る。

ビデオの世界にハマり込んだベニー。
「現実」はビデオ映像と違って先が読めないし、巻き戻しだって出来ない。そういった当たり前なことに対する意識がベニーには不足していた。

自分が犯した過ちの理由を問われた際、ベニーが「分からない、どんなものかと思って」と発した言葉に、予測不能な「現実」への淡い好奇心と、「生」に対する渇望が垣間見れた。

普段私たちが目にしているTV、ビデオ、映画に至る全ての映像は、「観る側」に向けた一方通行の情報であって、そこに相互のコミュニケーションは成立しない。常に「観る側」だったベニーは、ディスコミュニケーションに慣れ過ぎていた。

リアリティが欠落することの危険性を、ハネケ監督は「観る側」に感じさせたかったのではないだろうか。
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