ベニーズ・ビデオの作品情報・感想・評価

「ベニーズ・ビデオ」に投稿された感想・評価

踊る猫

踊る猫の感想・評価

3.9
撮影されたら手ブレも生々しく、再生されても粒子が荒い映像でしか映し出されることのない「ビデオ」の画像とミヒャエル・ハネケの映画本来のクールな質感の画像が溶け合って、曰く言い難い世界を作り出しているように思う。主人公のベニーは「ビデオ」の画像に没頭する人間、つまり「ビデオ」を通してしか現実と関われない人間なのだろう。だから彼は人を呆気なく殺す。ネタを割るのは慎むが、そんなベニーが自我の内側に閉じこもっていたのが、旅行に行ったことで「外側」つまり「リアル」を観たと解釈するのが妥当なのではないか? だから改心したのではないか……そんなようなことを思って観てしまった。もちろんこれはかなり単純化された感想でしかなく、「スジ」でしか映画を観られない私の限界なのだろう。飛び抜けた傑作、というのではないと思う。しかし、犯罪者の生々しい心理に敢えて淡々と客観的に触れた佳品として私には映った。
なんて暗くて冷たい映画だろう。でも、本当に心を揺さぶる何かがある。特典のインタビュー含めて素晴らしい作品でした。
misato

misatoの感想・評価

3.9
ハネケ「感情の氷河化」3部作の第2弾。青白いフレームにする事で、冷たい雰囲気が画面から伝わるようにしている。登場人物の感情表現はひたすらに切り捨て(彼の作品に基本そんなものはない)、まあもちろん観客に対して答えを出す事はない。世の中に広まるメディアを通じた世界を現実と混同してしまう、というのがベースのテーマで、もう1つのテーマが犯罪者が犯罪を起こす動機の複雑性。ハネケ作品にしては解読の難易度低め作品ですかね、、
かなりの問題作。休日のティータイムに頬杖ついて観れるような代物じゃない。

冒頭の豚の屠殺シーンで、この作品がとてつもなく暗い作品ですよ、ということが宣言される。

テレビ・ビデオに影響を受けるあまり、虚構と現実の区別が曖昧になった少年は、何をするにも、少女を撃ち殺すことにすら、「何となく」「わからない」と一切の動機がなく、どこかフワフワとしている。

少年が向き合うリビングの壁にひときわ目立つ、ウォーホルのマリリン・モンローは、ショービジネスの表舞台と色褪せた空虚な現実のギャップを表す作品であり、その配置が偶然とは、自分には思えない。

とはいえ、罪を犯した後、丸坊主にしたり警察に告白しにいったりという一連の行動を見ると、本人が「何となく」行ったことでも、心は大きなダメージを受けているような気もする。たとえ、現代の現実感が希薄になりがちな状況においても、人の心の奥は変わらないという監督の微かな希望が見えなくも…ない?笑
繰り返される豚の屠殺するビデオテープ


気に入った
他の三部作にも手を出そう

なぜあんなことしたんだ?
と父からの問いかけに対して

あんなこと?
どんなものかとおもって
どうかしてたのかな、

と感情の起伏なく淡々と。


このやり取りは監督が実際に耳にした忘れられないニュースが元で、きっかけとなり
現実感の喪失のために撮ったという

対人関係にて相手の気持ちがわからない
コニュミケーションがうまくとれない
断髪と映像を通して、両親に見せ、無言ながらに
これが、お前ら両親がぼくにしてきたことだと暗に訴えている。


死へ惹かれる性格の持ち主

生と死をもてあそぶ、ビデオテープを回す
鶏の死骸
豚の屠殺
少女殺害


合唱
彼の恐怖に恐れることなく
世界よ猛り狂え

息子の罪を隠蔽すべく両親は死体ミンチ処理とインド旅行計画をたてる
がその後むなしくも
息子は警察に事件のこと、両親のことを告発し、かえっていいですか?と隠蔽にすら協力できずに終わる

息子は罪を意識していても逃げたがっているような、アンビバレンスな心境に無表情ながらにある。


ビデオをテーマに、スクリーンの中のスクリーン、録画映像を通しての表現が面白い
見ているものを見ている。
さらに音も。

熱が感じられないのは
カッコつきの現実より
ビデオは現実より冷たい
距離感と明晰さを表現するために、現実より有罪性がテーマの三部作品は作為的に冷たくなるよう青みがかった撮影にしている。



監督インタビューにてメモ。

人はなぜビデオを撮るのか
映像をとるとこはそれを所有すること
だかこれはとても強い欲望で
メディアによってもたらされたものだ
なぜなら人は世界をメディアをとおしてみてるものだから。
だから人間はメディアを通して見たものだけが現実だと思い込む危険性がある。
実際は正反対だ。
映像に対して幻想を抱くことは構わない。だが人間に対しては許されない、とても危険だ、
映像は反対しないしだから緊張しない。
だから元を正せばホラー映画はそうして生まれてくる。というのも実害はないという安心感から恐怖が楽しめる。
実際にそんな目にあったら楽しんでるどころの騒ぎじゃない。
だがすべてのこうしたジャンルの映画は、ホラーSFアドベンチャーもじぶんが状況を支配できるという幻想を持つことから始まる。
監督は状況を支配できる、映画は監督の創作だから。
観客の立場は罠に落ちても自分は無事だとおわかっている。
現実の生活でそれをやろうとすると、ものすごく危険だ、
それがベニーズビデオだ。etc


映画論まで語ってくださってとても面白い!
インタビューきいてるも、タイムリーな小学生死体線路遺棄のことちょっと連想する
犯人はなぜこうしたのか?に固執するメディアにまさにウンザリしてる。ママの愛情が足りなかったからじゃないかとか、答えをだして視聴者をなだめようとする意図が見え見えで気持ち悪い。
1つの犯罪、あるいは事件が生まれた理由は一時間でかたるのにも複雑すぎるのにねって通じる部分ある。
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.2
 元気いっぱいに動き回る豚は飼い主に無理矢理引きずられ、銀の筒状のスタンガンで撃ち殺される。スタンガンの威力は絶大で、頭に一発撃ち込まれた豚は一瞬で力をなくし、その場に突っ伏すように倒れる。うめき声が辺り一面にこだまし、空には雪がひらひらと舞う。目玉は飛び出し、一瞬だったので苦しんだ様子はないが、一頭の豚の命を奪うまでをビデオカメラで撮影した映像が流れ、どういうわけか映像は巻き戻しされ計2回豚の屠殺場面を伝える。少年はこの豚の屠殺シーンを収めた暴力映像に取り憑かれている。おそらく今日だけではなく何度も何度も屠殺シーンを巻き戻しながら見ているのだろう。彼は典型的な現実とバーチャルの区別のつかない人物として描かれる。90年代以降、先進国の少年による殺人事件が取り上げられるたびに、しばしば現実とバーチャルの区別がつかないパーソナリティ障害という精神疾患がクローズ・アップされるようになる。1日中部屋の窓を閉め切り、ビデオによる映像を大量に浴び、屠殺場面に取り憑かれた少年の様子は勃起不全のメタファーであり、血が通っていない。

 いつも通っているレンタルビデオ店でビデオを借り、外に出てみると軒先のモニターを食い入るように見つめる1人の少女を発見する。彼女を自分の部屋に招き入れ、様々な説明をしながら帰ると言った彼女を呼び止め、冒頭の屠殺シーンで実際に使われた銀色のスタンガンと弾を見せる。ボーイ・ミーツ・ガールな少年少女は度胸試しのつもりで、互いの胸にスタンガンを押し当てる。だが次の瞬間、少年の当てたスタンガンは突然暴発し、彼女は悲鳴を上げながらその場に倒れる。その一連の描写が偶発的か必然的かは各人に委ねられるが、豚の屠殺映像に取り憑かれた少年は、ここでスタンガンの生きた威力を知ることになる。あまりにもショッキングな場面を、ハネケは部屋に設置された冷たいモニター映像で映し出す。主人公が少女に直接的にスタンガンを撃ち込んだ映像は巧妙にフレームの外に押し出され、少女の絶命の瞬間を観ることは叶わない。その日会ったばかりの行きずりの少女を、主人公の少年は無残にもスタンガンで殺し、床に流れた彼女の夥しい血液を、牛乳を拭くのと同じように拭き取る。自宅の電話が鳴り、19時に友人と約束して遊びに出る主人公の現実とバーチャルの乖離ぶりが怖い。この一連の行動は偶発的であれ必然的であれ、事態そのものは列記とした犯罪であり殺人である。

 長かった髪を剃ったのは贖罪の気持ちだけでなく、両親への見えないシグナルだったことは想像に難くない。その後、少年は父親と母親と映像を介してコミュニケーションを取る。父親は大手通信会社に勤め、母親は美術商を営むブルジョワジーの核家族の行動は最初から破綻しているのだが、両親は少年の犯罪を何とか隠蔽しようと試みる。母親と息子のエジプト行きのチケットを手配し、父親が少女の死体をバレないように遺棄した後何食わぬ顔で息子と母親をオーストリアに帰国させるが、息子が少女を殺した罪は消えない。思えばハネケの映画では罪を背負った登場人物たちが出て来る。今作ではその「罪」から息子を守ろうとするが、その行為が逆に息子の犯した「罪」を際立たせる。ラストに置かれたTVモニターによる戦争や犯罪のニュースは、自己中心的で物質主義に至る現代人を痛烈に批判する。翻って冒頭の豚の屠殺場面に円環状に戻るラストは、メディアによる非現実化のなれのはてを露見させる。
《過去に観たハネケ作品をもう一度観直そう!ひとり企画》
↑とか言いながら今年の3月以来のUPです^^;

「感情の氷河化」三部作の第二弾。

やっぱ凄いよ、ハネケ!
変態、あ、いや、天才だよ!

後味悪い映画をお好みの方には猛烈にオススメ(^_^;)


ちょこっとあらすじ☆

ベニーは比較的裕福なおうちの少年。
趣味は映画鑑賞&自らなんでもビデオに撮影すること。
部屋には機材が一式揃っていて、常に窓の外や自室が録画されている。
自身の撮影でのお気に入りは豚の屠殺シーン。
豚のおでこに筒状の銃?を当ててショック死させるシーン。
それを何度も何度も巻き戻ししてスローで観たりと、とにかくお気に入り。
さて、その屠殺用の銃をベニーは農場から盗んで来ちゃって机の引き出しに隠し持ってるわけです。
ある日、見ず知らずの少女を家に連れ込み、ひょんなことからその銃で少女を殺害しちゃうんです。。。


ここから先がすごい。
ベニーと彼の両親の行動が尋常じゃない。
大なり小なりの衝撃がいくつか続きます。

全く理解出来ないのがベニーの表情。

冷酷なのか無関心なのか。
それとも無関心を装ってのあの言動?

とにかく得体の知れない怪物のような少年です。

ハネケの作品、だいぶみんな狂ってる。

人間の闇の部分。
心の奥の奥の悪魔の部分。

そういうのがそっけなく描かれているから観ているこちらはゾッとしてびっくりしちゃう。
嫌なもん観たな、と。。。

次『71フラグメンツ』です。
手に入り次第。。。(^^;;
ひゴル

ひゴルの感想・評価

4.2
怖いもの見たさが発動したもんで..
(普通は見ないが..)

ミヒャエルハネケの映画ということで..

べニーはビデオオタクで何でもかんでも撮影する少年。レンタルビデオにも心酔していた.. (今でいうスマホ依存症的な?)ある日、べニーは親の持っていた屠殺用の圧縮なんちゃら(ノーカントリーのシガーが使ったやつの小型)で女の子と遊んでいて女の子に"臆病者"って言われた途端レバーを引いてしまい、痛い!!と大声出して大暴れるもんだから何発もぶち込んで仕留めちゃいました!その後の顛末やいかに...

この監督変態だわ!😂
ネクロ

ネクロの感想・評価

5.0
凄い映画だ、、、
otom

otomの感想・評価

5.0
ハネケの"感情の氷河期"三部作の二作目。先日に続いてこちらも十年ぶりくらいの鑑賞。メディアは異なれど、テーマとなるいびつな距離感と胃に来る感じは最新作の『ハッピーエンド』まで一貫している。何が怖いって音が怖いよなぁ。と思いきやオルガンやら聖歌で意識をさらって行く絶妙さ。凄い。傑作。
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