kyoko

有りがたうさんのkyokoのレビュー・感想・評価

有りがたうさん(1936年製作の映画)
3.8
初・清水宏作品。

「有りがたうさん」といういかにも実直そうなニックネームに対して、上原謙の色気がダダ洩れすぎている。冒頭、寝転がってタバコを吸う姿なんて完全に悪い男にしか見えなかった(笑)「有りがたうさんのバスに乗りたくて一本遅らせた」という艶っぽい姐さんも現れ、これは相当のモテ男だなと確信させる。
そんな色男がバスを走らせたとたん、道を譲ってくれた人、馬、鶏たちに、いちいち「ありがとーう」と声をかけるもんだから、ギャップ萌えでさらにモテるじゃないか。
すごいぞ有りがたうさん。

貧しい者、女性、朝鮮労働工、世の弱者たちの行く末を、今までイヤと言うほど見続けてきた有りがたうさんは、彼らを思いやると同時にそんな世の中に対してどこか冷めているようにも見える。
これからも有りがたうさんはお使いや言伝を頼まれてやり、白いチマチョゴリを泥で汚していたあの娘の願い事も叶えてやるんだろうな。
と、思っていたところであのラスト。
個人的にはかなりの違和感があったのだけど。。。
三千字に満たない原作をあれやこれや解釈し過ぎていたせいかも。

結果、心温まるより桑野通子のイキな姐さんぶりがあざやかな印象となって残る作品。

併映作品
「ともだち」
朝鮮総督府時代の、朝鮮人の子どもと日本人の子どもの交流を描いた短編作品。サイレントだったけれど(上映前にシナリオコピー配布)子どもの自然でコミカルな動きが可愛らしくてクスクスと笑いが起きた。清水監督が子どもを撮るのが上手いと言われるゆえんが分かる。
「京城」
映画の統制と国策化に基づいて制定された「映画法」のもと撮られたドキュメンタリー作品。
京城の生活の様子をただただ映したもので、恐ろしく退屈だった。