しゅん

有りがたうさんのしゅんのレビュー・感想・評価

有りがたうさん(1936年製作の映画)
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バスを避ける通行人に対して「有りがたう〜」というのを冒頭で4度繰り返すが、前からの視点と後ろからの視点を組み合わせたモンタージュの省略の仕方が独特で、最後の方はほとんど避けてないのにバスが通過していくから、バスか通行人どちらかが幽霊に見える。ゆるい音楽と世知辛い社会背景(不景気の話ももちろんだが、チマチョゴリを着た女性労働者が出てくるのは驚き)が作るムードは俗世的なはずなのに、どこか幻想性を帯びているのが本作。実直なバス運転手役の上原謙が色気ありすぎなのも一因かな・・・。「街道渡世の仁義ですよ」の名台詞と、乗り遅れたおじさんの後ろを横切る犬の姿が印象深い。

盲人と橋がセットで出てくるのは『按摩と女』を思い出させる。桑野通子が山道の車中ずっと後ろ向いているもんだから観ているこっちが車酔いしてきた。
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