ryosuke

プロスペローの本のryosukeのレビュー・感想・評価

プロスペローの本(1991年製作の映画)
3.3
動的で派手なパラジャーノフといった趣だったが、残念ながらハマれず。パラジャーノフはいけてこれはダメなのが何故なのかはうまく言語化できないが、ひっきりなしに大演説の調子で鳴り響く台詞がうるさく聞こえてしまったのはあるかな。シェイクスピアに造詣が深ければ面白くなる...ってもんでもなさそうだ。まあ静的なパラジャーノフに対して本作は一つの舞台をダイナミックにカメラが動き回るし、セリフも扇情的な音楽もずっと鳴り響いているので対極とも言えるが。
オープニングでばばーんとマイケル・ナイマンのメインテーマが鳴り響いた瞬間はゾクッとしたし、冒頭のどこまで行くんだという右スクロールも凄いとは思うんだけどねえ。どんだけでかいセットなんだろうか、あるいは技術で誤魔化してるけどカット割られてるのかな。
画面内画面の手法も、本来異なった時間に連続的に配置されるはずのカット、モンタージュの制約から解放されようという野心的な試みなのかもしれないが結局邪魔にしか思えなかった...。ロングショット長回しの中に、本来は画面繋ぎの中で入ってくるはずの小さいショットサイズのカットが同時に重ねられて多層的な印象にはなっているが...。
基本的に舞台をワンカットで捉え続けている感じなのだが、男女が恋に落ちる瞬間だけは、叙情的な音楽が鳴り響く中で男女のクローズアップ切り返しが差し込まれるのが目立つ。男女の「運命の出会い」に関してだけは映画的文法に従うんだなと思って面白かった。
グリーナウェイなので、べろーんと胎児入りの腹が露出する妊婦、木の幹に埋め込まれた妖精、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」の土方巽みたいなポジション、動きの悪魔など、細部にはもちろんインパクトがある。
悪魔と三下二人を画面奥までカメラが追っていくと、扉が開いて返り討ちにされ一気にトラックバックで戻ってくるカットもダイナミックで面白かった。
ベルイマン 、タルコフスキー俳優のエルランド・ヨセフソンが「高貴な人」として出てきて、その姿が拝めたのもちょっと嬉しかったかな。
まあ最後はあれだけ言われたらちょこっと拍手はしましたけどね。
ryosuke

ryosuke