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曳き船のエディのレビュー・感想・評価

曳き船(1941年製作の映画)
3.8
ジャン・ギャバンを主人公にして、難破船の船長と救助した船に乗っていた女との不倫を描いた巨匠グレミヨンによるロマンス映画。船乗りを主人公をしているけど、内容はテレビの昼のメロドラマ。時間が短いせいか、登場人物の設定が類型的なのと描写が深くないので、ロマンスというよりメロドラマで終っているのがもったいないけど、時代を考えると遭難シーンなどは迫力ある描写だと思う。

主人公アンドレは曳き船と呼ばれる海難救助船の船長だった。海難救助船は今ではない業態だが、救助信号を受信すると救助して、保険会社から報酬をせしめる民間の船のようなので、海上保安庁というよりはリスク承知で大金を狙う荒くれ男たちが乗っている。
そんな船長のアンドレは無骨で生真面目な海の男で病気がちの美しい妻がいてそれなりに満足した日々を送っていたが、あるとき救助した船に乗っていた不思議な女と知り合ったことで人生が変わってしまう。。。

冒頭の部下の結婚式で、アンドレ周辺の登場人物やその関係や仕事をさりげなく描写して、すんなにストーリーに入らせる手腕はさすがだと思うし、豪華絢爛、激しい嵐、難破船といった様々なシーンを時代を考えると上手く撮影していると思う。モノクロだが映像の美しさが印象的だ。

ただ、この映画は人の描き方が類型的というか、良い奴、悪い奴、謎の女といったように紋切りの設定にしているので、人間関係が表面的で深くないのだ。アンドレは海の男なので家を不在にしがちで、それを待つ女は病気を抱えているが夫の帰りをひたすら待つ健気な女で、そこに謎の女が現れて・・・なんていう描写なので、なんだか昼のメロドラマみたいな安っぽさを感じてしまった。

それから、論理的に破綻しているとは思わないけど、救助される船長の思考は理解不能だ。彼がああいう変な態度を取らなければ不倫にならないので重要な位置づけなのだが、その彼の行動が海の男としても船長としても命が大切な人間としても理解不能な描き方なので、不倫に至る過程がご都合主義に思えてしまった。

この辺の安直さが、ロマンスの傑作ではなくメロドラマ的な位置づけで甘んじてしまっている理由かもしれない。
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