栁夛一

悪魔のサンタクロース/惨殺の斧の栁夛一のレビュー・感想・評価

-
序盤、植物人間のおじいちゃんのお見舞いに行くシーンから始まる。が、植物人間状態のはずなのに主人公の坊やの前では急に動き出す。これだけでも怖いのに、「クリスマスにサンタは悪い子にお仕置きをする」とか吹き込んでくる。そしてこの後はおじいちゃん一切出てこない。怖い。
お見舞いの帰り道、サンタクロースに扮した人物に目の前で両親をコロされた主人公の坊やは、当時赤ちゃんだった弟と共に孤児院で育つも、クリスマスとサンタにはトラウマを抱えて生きていた。意地の悪いシスターの理不尽な仕打ちと鞭打ちに遭いながらも、心優しいイケメン好青年に育っていった。
しかし、クリスマスにトラウマを抱えているにも関わらず、何故かおもちゃ屋で働くことになり、挙げ句の果てサンタの格好をさせられることに。それだけでもトラウマに苦しめられるだろうに、よりによって片想いの子がレイプされる現場に遭遇。過去のトラウマがフラッシュバックした主人公はチャラ男をコロすのですが、ここで何故か女の子の方もコロす。復讐の鬼と化したサンタをもう誰も止められない、という流れ。

ピエロに両親をコロされたブルース・ウェインがジョーカーになる話とでも言えばよいのだろうか。トラウマを抱えた主人公君がサンタの格好で惨劇を繰り広げるのだが、デビルサンタに変貌するまで、つまり少年期に半分くらいの尺を費やしている加え、マスクやヒゲで顔を隠していないせいもあってか、 地味に感情移入してしまいそうになる。ナイフで腹を裂くようになったのも、鹿の剥製に女の子を突き刺すようになったのも、彼のトラウマと孤児院での環境が悪かったのだ。彼もまたクリスマスの犠牲者なのである。

少し文章が長くなったが、別段面白いわけではない。PTAのデモにより公開中止になったなど当時の評判や逸話に反し、現代人からするとゴア描写も控えめである。
同じ1984年公開の映画であれば、『ゴジラ(1984年版)』か『うる星やつら ビューティフルドリーマー』をオススメする。
栁夛一

栁夛一