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マイネーム・イズ・ハーンのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

マイネーム・イズ・ハーン(2010年製作の映画)
4.0
また長尺なインド映画です。
インドの3大カーンの1人であるシャー・ルク・カーンがアスペルガーでアメリカに移住した移民の青年を演じています。
インド映画の割に唐突で派手な踊りはなく、911以降のアメリカにおけるムスリム差別を描いたシリアスな作品です。

前半は、主人公リズワン・ハーン(hとkが混ざって喉に引っ掛けたような独特の息づかいの発音)のインドでの子ども時代が描かれていますが、他の子どもとの違いからいじめや差別を受けて辛い思いもするのですが、お母さんがリズワンのありのままを受容し愛してくれるんですね。
いじめられて学校には行けなかったけど、良い家庭教師にも出会えて、ちゃんとリズワンに居場所があって肯定されて育っていったのが良かったです。

アメリカに移住してからは、自分が他の人と感じ方などが違うのはアスペルガーだからだとわかり、弟の妻やのちに自分の妻となるマンディラもちょっと変わったリズワンのことも理解し、良さを見てくれる人との出会いの中で、苦手なこともたくさんあるけど幸せに生きてるのがとても素敵でした。

ところが911事件でイスラム教への敵意が瞬く間に広がり、ハーンというイスラム教徒を示す苗字によってとんでもない悲劇が起き、熾烈な差別に苦しめられるのが見ていてとても辛かったです。

確かにハイジャックしたテロリストはイスラム教徒だったけど、リズワンとはもちろん何の関わりもないし、リズワンは善良な市民であるのに、ムスリムだということだけでこんなに辛い思いをするなんて、差別の恐ろしさを感じました。
憎悪ってショッキングな事があると不安に駆られるから広がりやすいし、そういうヘイトを煽って分断する奴や利用する奴もいるわけで、でもやられる方はどれだけ怖くて悲しくて傷つけられるのか、911以降のアメリカのムスリムがどんなだったかを知ってショックでした。

今の日本でも何か起きたらきっと誰かをスケープゴートにして敵意や憎悪が蔓延するんだろと想像して、対岸の火事とは思えなくてゾッとしました。

アスペルガーゆえに人に自分の気持ちを伝えることが苦手だったリズワンが、どれだけ息子やマンディラを深く愛し、自分だけでなく差別されてる人たちの尊敬を取り戻したかったかを見て涙が溢れました。

ド派手なインド映画とは一線を画す社会派の良作でした。

69
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