朱音

インシディアスの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

インシディアス(2010年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「死霊館」が大好きなのでこちらもかなり期待して観たが、ジェームズ・ワン監督は相変わらず物語の中心となる一家のキャラクターと彼等の絆を描くのが本当に上手い。
登場人物は皆、善良で親しみやすい人物たちなのだが、何気ないやり取りからその人柄や愛情が自然と伝わってくる描写力が見事で、テンポの良い語り口でこれらを理解することが出来る。
キャラクターが魅力的であればこそ、彼らの身に降り掛かる脅威、怪奇現象(例え突拍子もないものであっても)によって大切な家族が奪われてしまう、家族が壊されてしまうという物語内の感情に求心力が生まれるという事をジェームズ・ワン監督は深く理解していて、常にそこをきちんと描くのを怠らない。

個人的には彼の作品はホラーというより、ホラーテイストのファンタジー映画だと思って楽しんでいる。
本作では幽体離脱や、彼方側の世界を具体的に描いた事でよりファンタジー色が強まった感がある。暗く深い青と黒、そして煌々とした紅の色調、幽玄でゴシック感溢れるテイストで描かれた彼方の世界は、いわゆる現実味としてのリアリティは感じられないが、美しく見応えがある。
本作の恐怖表現はこけおどし的な表現や、音で驚かす安易な演出が多く目立ったのが残念。
家という空間を映像のなかで再構築し、人が歩くのに沿って動くカメラワークや、壁や床などの隔たりを経て人物と人物の位置関係などを分かりやすく把握させ、それによって緊迫感を演出してみせたり、床や扉の軋む音などの細かな音響の作り込みなど卓越した表現技術で、それだけでその家が十分不気味で、好奇心を刺激されるものになっているだけに非常に勿体なく感じた。

キャスティングも適格で、親和性も感じられてとても素晴らしい。
霊媒師チームが出てくるだけでもうワクワクする。本当にキャラクターはどの人物も魅力的だった。

それだけに、というか今回のオチは取って付けたような、物語的に見ても全く意味のないBAD ENDであって、無駄に後味を悪くするだけの、それこそ本末転倒に感じるものだった。
あと、弟くんと赤ちゃんが途中から全く出てこなくなったのも気になったし、写真を使った伏線の張りかたは良かったが、母親が作曲家という設定はかなり特徴的で、どこかで活かされるのかと思いきや、特に深い意味がなかったのも何だかなという印象。
朱音

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