backpacker

宇宙人東京に現わるのbackpackerのレビュー・感想・評価

宇宙人東京に現わる(1956年製作の映画)
3.0
本作は、東宝の名作『妖星ゴラス』公開に先駆けて製作された、地球に接近する天体の衝突を巡る、SF特撮映画です。
しばらく前(レビュー投稿日参照)、ジェームズ・ガン版『スーサイド・スクワッド』のトレーラームービーにて、ヒトデ型の巨大な怪物が登場しておりましたが、この怪物を見て、ヒトデ型の怪物が登場する元祖の映画として、本作を思い出した方も多いのではないでしょうか?


本作のヒトデ型の怪物、彼らはパイラ人という宇宙人です。
さも巨大な化け物かのように描かれておりますが、実際はそんなに大きくありません。人間サイズです。
(なんとデザインを担当したのは、芸術家の岡本太郎氏。)

パイラ人は、高い知性と優れた科学力を持つ宇宙人で、非常に友好的です。
彼らが来訪した理由は、「地球の原水爆開発への警告のため」と「宇宙道徳に基づき、新天体Rが地球に衝突することへの警告のため」という、これまた非常に平和的な目的でした。

残念ながら、彼らの容姿は地球人としては恐ろしい部類のため、対話をしようとしても逃げられてしまいます。
そこで打った手が、「地球人の容姿に変身して接触を試みる」というもの。
実のところ、地球人の容姿はパイラ人にとっては逆に極めて醜いものと写るのですが、そこは友好のため、自分たちも醜い姿に変わりましょうという、大人な対応をしてくれます。


パイラ人についてばかり記載してしまいましたが、作品内容についても触れておきたいと思います。

まず、作品テーマについて。
本作は、"核兵器の廃絶"と、"来たる宇宙時代への憧憬"を描いた映画です。
特撮映画で反核と言えば、当然皆さん思い浮かべますのは、1954年の『ゴジラ』。
大ヒットしたゴジラに続けと言わんばかりに、大映も特撮映画を作ります。
そこでも、やはり敗戦国にして唯一の被爆国である日本が夢見るものは、核兵器なき世界。
ということで、本作で描かれるのもまた、核兵器を全て使い果たし(新天体Rの破壊の為に使用)、核なき世界として生まれ変わった地球です。
また、宇宙進出の未来を予感させ、これからの世界への希望を高らかに描きます。


ヒトデ型宇宙人がもたらすのは、未来は明るいという希望の讃歌。
特撮のヒトデの元祖、是非ご覧ください。
backpacker

backpacker