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ベルイマン監督の 恥のadeamのレビュー・感想・評価

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)
2.5
ベルイマンが珍しく戦争というモチーフを扱ったキャリア中期の作品。
内戦が勃発中の島で暮らす夫婦が戦禍に見舞われ、その関係性が破綻していく過程を描いた物語です。
戦争という外側で起きている大規模な事象を扱いながら、あくまでもそれは背景に追いやり、夫婦の心理状態の変化という内面のパーソナルな部分にフォーカスしているのがベルイマンらしくておもしろかったです。
向き合いたくない問題を突きつけられた時、外的要因によってそれどころではない状況になってしまえば、問題から一時的に逃げることができます。
しかしそこで本来の人間性が露わになるのは、夫婦関係や男女関係に限らず、広く共感できるテーマだった気がします。
ベルイマン得意のリアリティを超越した表現が今作では観られず、それゆえにセリフもなく語られる終盤の船上での悪夢的なシークエンスが現実として迫ってきます。
生に縋りつくように残り少ない水を分け合い、わずかな食糧を貪り食べる人々の行手を阻むものは表現として直接的な気はしますが、もはや逃避するしかないという皮肉で救いのない結末は良かったです。
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