どこまでも冷たく乾ききった語り口で、サスペンスともホラーともとれぬ異様な世界に問答無用で引きずり込まれた。失踪した妻の行方を追う男と、淡々とある'実験'を繰り返す誘拐犯の姿を描いた本作は、人間の内側に秘められた'好奇心'に対して容赦のない攻撃を仕掛けてくる。何故妻は消えたのか、誘拐犯の目的は一体何なのか?主人公と鑑賞者の心情をシンクロさせながらグングンと高みへ導いていき、ラストでドン底まで見事に突き落す。どれだけ残酷な真実だろうと、'答え'を求めずにはいられない。そんな人間の習性を逆手にとった、身の毛もよだつ作品である。