おむぼ

ザ・バニシング-消失-のおむぼのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
4.4
わからないことがあれば好奇心で何かしてみたくなるというのは人として当然なことで、それを趣味や研究に昇華していけることもある。
そして人が死ぬことはわからないことだらけなのであまりにも直接的すぎるが、人を殺すことを趣味にするのも全くおかしな話では無いと思う。

この映画の殺人者は、しょうもなくやるせない世間の目をうまくごまかすための自由研究を重ねた末の実験をしたに過ぎなくて、これが人を殺すことではなく別のことを描いていたならばよくあるサクセスストーリーだったかもしれない。

実際、トレーラー作戦が失敗して標的の女の旦那にはたかれる件だとか、娘の誕生日プレゼントでもらった人生を振り返るフォトアルバムから犯行の案を思いつくだとか、人間味が溢れていて微笑ましい。サイコのくせに。

理論的なサイコの映画なので、血が出たり派手なショットは無いものの、車のバックミラーに顔が反射したり、ワイパーが動いて雨が車の窓に波打ち、顔がモヤモヤとハッキリを繰り返すなど、妙におしゃれでじわじわとくる良い画の工夫もあった。とくに、ほぼ最後のあのシーンは寄り加減とライターの炎による良い画が現実的な恐怖をより効果的に演出していた。
あと、エンドロールで流れる曲のメロディがねっとりした冬のソナタの主題歌みたいだった。
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