砂場

和製喧嘩友達の砂場のレビュー・感想・評価

和製喧嘩友達(1929年製作の映画)
4.0
1929年サイレント期の一本。
残念ながら短縮版しか現存しないが、それでもダイナミックな乗り物シーンは見応えがある
まずはあらすじから


ーーーあらすじーーー
■トラックの運転手留吉(渡辺篤)と助手の芳造(吉谷久雄)は仲良しで共同生活している
■お前の卵が割れた、ちゃんとしたほうが俺のだ、、、、
二人はボロ家であるが木箱のテーブルに洋風なクロスをかけて
レストラン風に装っている
■二人は新しい仕事にトラックで向かうが、女性(浪花友子)をはねてしまう。大きな怪我もなく、送っていくよというが
私、家なんかないんです、、じゃあ俺たちの家に、ということになった
■朝、お美津は炊事をしてくれていたが、
炊事は俺がする、余計なことするなと芳造はおかんむり
お美津が顔の泥を落とすとえらい美人であり、二人は見惚れて卵を落とす
お勤めの時間ですよ、二人はお美津に小遣いをやる
■何ぼんやりしてる、上司に叱られる留吉
トロッコで寝ていた芳造に留吉のトロッコが激突し、二人は大げんか、おいおい、殴り合いになるが、上司はやらせとけ
■古着屋で買ってきたぞ、新しい着物をプレゼントする
芳造は食べ物が喉に詰まって、金魚バチの水を慌ててのむ
■お美津と学生の岡村が親密に
若い二人の門出の日だ、二人が汽車で旅立つと、窓の外には
■留吉と芳造がトラックで追いかけてきた、二人はお美津と岡村の乗る汽車に大きく手を振る
ーーーあらすじ終わりーーー



🎥🎥🎥
オリジナルは77分であるが現存するのは14分版だけである。
流石に短縮版ではストーリーを追うのは難しいが、主要人物たちのキャラクターも明確で、動きなどだけでもなかなか面白い
1929年は本作含めて6本も撮影している。タイトルに”和製”とあるように、「喧嘩友達」というアメリカの映画へのオマージュである。
アメリカの「喧嘩友達」の公開が1927年だそうなので、翌年くらいには見ていることになる。蒲田の時代、どこでどうやって見たのか知らないけどかなりアメリカ映画のキャッチアップが早い。

それにしても「和製喧嘩友達」とは人を食ったタイトルであり、あえての紛い物感が面白い。
劇中でも留吉と芳造はボロ屋で和製ダイニングで食事しておりアメリカへの憧れが笑いになっている。
そんな小津が後年逆に世界に大きな影響を与えることになるとは1929年の小津には想像もつかなかっただろう。

後年のスタティックな小津調とは異なるダイナミックなトラックの動きは目を引いた。
お美津をはねてしまうところは、トラックに車載したカメラであろうか、、、ラストの汽車をトラックが追いかけて並走するシーンのスピード感には驚く。
宮崎アニメの背景動画のシーンのように、背景がセル画で描かれて動いていくような錯覚を覚えた。
「名探偵ホームズ」のOPアニメのようなアクションで結構かっこいい

いつかフルバージョンが発見されないかなあ
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